まだまだ頑張る現役編集長の奮闘録

2016.09.06

アストン マーティンDB11とホンダNSXについて思う事

 
先日、アストン マ-ティンの第2世代のスタートを切るニューモデル、DB11の日本国内発表会が開催された。展示された実車をみると、紛れもないアストン マーティンでありながらも、これまでよりも更にオーラが増したゴージャスなボディラインで、見るものを圧倒していた。その心臓部も新開発のV12DOHCエンジンにツインターボを備え、608psのパワーを発揮するというから、正に外観から醸し出す迫力のみならず、実際に驚異的な性能をも持ち合わせているのだ。こうしてみると、21世紀の初めにDB9でスタートしたアストンマーティンの第1世代が大成功に終わり、それを引き継ぐべき次世代モデルとしての役割を担ったDB11は、それに相応しい姿で登場したと断言できそうだ。そして、その価格は何と2380万円であるという。このスタイル、この性能を見れば、昨今のスーパーカー・マーケットに於いて、いちいち実例を上げずともバーゲン価格に近いことが理解できよう。

 

 
さて、この価格であるが、最近、どこかで聞いたことがあると思ったら、ホンダNSXの価格が2370万円で10万円違いであることを思い出した。10万円の差なら、ほぼ同じと言っても差支えないが、はて、この2台のどちらを、スーパーカー好きは選ぶのだろうか、と思うと非常に興味深い。片や、103年の歴史を誇るスーパーカー・メーカーが満を持して送り込んだ新モデルであり、もう一つは、10年ぶりに登場した和製スーパーカー(尤も中身は米製)であるが、特に歴史がある訳でも、世の中を一変させるような物凄いテクノロジーがある訳でもない。スーパーカーを購入する際の最も大切なことは、いちいち説明しなくても一目見て、誰もがどこの何と言うスーパーカーだと納得するスタイルであることだ。その意味ではまだ、NSXの歴史は始まったばかりであり、しかも、1代目からは、全く脈絡のない登場の仕方を考えると、到底、独自のアイデンティティが現時点で存在するとは思えない。言ってみれば、大人と子供ほどの差が、この2台には存在するような気がしてならないのだ。

継続は力なり

 
ホンダがこのクルマで、アストンのような歴史を作るには、継続は力なり、と言う言葉に代表されるひたむきな努力が必要だと思うのだが、これまでのホンダを見ると、景気が悪くなってクルマの売れ行きが不調になったり、会社の成績が悪くなるとすぐに、スポーツカーの生産を止めてしまう、ということを繰り返している。F1ですら、全てを止めてしまい、また、数年後に復活させるという繰り返しである。このことは、ある意味、如何にも潔いように見えるが、はたしてそうだろうか。筆者の穿った見方をすれば、技術力さえあればいつでもどうにでもなるという、技術者の奢りではないかとさえ思うのだ。F1の世界も、スーパーカーの世界も、全身全霊を懸けたスタッフが技術の粋を絞って必死に戦っている戦場だ。そのような場では、ハイレベルな技術者の継続した弛まない努力が必要で、ひとたび、それを途切れさせればなかなか競争力やブランドが蘇ることは難しいのだ。そのような世界に、ただ単に、“技術者の挑戦”、というようなレベルの気持ちで何回もゼロからやり直すのは、歴史に学習していない、と言われても仕方がないと思う。今回のNSXも、失礼ながら、特にデザインに新鮮味がある訳でもなく、性能面で凄く優れているわけでもなく、価格だけは他に比肩するものだとすれば、その結果は憂慮すべきものになってしまう可能性が高い(無論、杞憂に終わってくれればそれに越したことはないが)。今回こそ、意地でも(売れても売れなくても)生産を続けて、3代目、4代目とバトンタッチを果たして、やり始めた以上、ホンダのスーパーカーの歴史を作ってほしいものだ。

国内でも、GT-RやフェアレディZの例をみれば判るとおり、継続とブランドの構築は正しく同義語なのである。

 
 

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