アウディA6 BiTDi クワトロSE

公開 : 2012.04.12 13:08  更新 : 2017.05.29 18:18

■どんなクルマ?

アウディ・ファンは、BMW535dに対抗しうるインゴルシュタット製のスポーツ・サルーンの登場を長いこと待っていた。ル・マン24時間のディーゼル部門で5回も勝利をものにしたテクノロジーのフィードバックも大いに期待されるところだ。そして、その回答がやっと英国の海岸に到着した。アウディA6 BiTDiがそれである。

BMWが行ったように、アウディも3.0リッターの6気筒ディーゼル・エンジンにツイン・ターボチャージャーを備えることでパフォーマンスを引き出している。それは、今年、A6サルーン、A6アバント、そしてA6オールロードとA7スポーツバックに搭載されることとなる。

そのエンジンの基本は、通常のA6に搭載されるV6のTDiである。2967ccのV6ユニットは、長さが440mm、重さは200kg未満で、鍛造のクランクケースとアルミニウムのアロイ・ヘッドを持ち、より速いウォームアップをもたらすと共に燃料効率を高めるためにクランクケースをバイバスするインテリジェント・デュアル・サーキット・クーリング・システムが与えられている。4本のカムシャフトは2つのタイミングベルトでドライブされるが、これは4チェーン・ドライブに比べて摩擦と重量を軽減することに成功している。

シーケンシャル・ターボチャージャーは、ハイ・パフォーマンスを引き出すために採用されているが、可変翼を持つ小さいターボチャージャーは低回転用に、大きいターボチャージャーは主に3500rpm以上でのパワーを引き出すために使われる。エンジンにかかる余分なプレッシャーは、モディファイされたヘッド・クーリング、修正されたカム・タイミング&リフト、そして補強されたピストンで処理される。

309bhp/3900rpm-4500rpmというピークパワーはBMW535dとほぼ同じ値で、66.2kg-m/1400rpm-2800rpmピークトルクはBMW535dよりも上回る。その値はシリアスにパフォーマンスに表れており、0-100km/加速が5.1秒という俊足ぶりをマークすることとなる。しかも経済性も素晴らしく、15.6km/lという値を叩き出している。

更にセールス・ポイントのひとつが、4WDのクワトロ・システムと8速のトルクコンバーターとの組み合わせだ。

そして、ドライバー・セレクトの可変ダンパー、バリアブル・レシオのスポーツ・ステアリング、そしてスポーツ・リア・ディファレンシャルの有無によって、SEトリムとSライン・トリムを選択することが可能となっている。

ちなみに、われわれがテストしたのは、インゴルシュタットの、より巧妙なシャシーとドライブライン・ガジェットを持たない比較的シンプルなSEモデルだった。奇妙なことに、BiTDiを示すバッチはどこにもつけられていなかった。

■どんな感じ?

BMW 535dやジャガーXF3.0D Sに対して、アウディA6はそのパフォーマンスにおいて若干劣るところがあるようだ。BiTDiのスロットル・レスポンスは素晴らしいものの、通常のクルージング・スピードから加速をしようとする際に、8速ギアボックスがキックダウンをしてミッドレンジのトルクを引き出さないと駄目なのだ。その際のタイムラグも気になる。一旦、エンジンがどのミッドレンジのトルクフルな領域に入ってしまえば、そのはっきりとした力は恐るべきものなのだが。エンジン回転数が3000rpmから4500rpmの間にあれば美しい旋律を奏で、速度無制限のアウトバーンを160km/hを超えるスピードで巡航することも問題はない。

しかし、そういった速度域においては、魅力的なスポーツ・オプションもきちんと提供されているBMW535dのドライビング・マナーをAUTOCARは支持することとなる。

アウディA6は、そういったスポーティな味わいとは異なる魅力の持ち主である。BMWより優雅で心地よいクルマなのだ。それはパフォーマンス・ツールというよりも高性能なビジネス・ツールなのである。これは肝心な点だ。

数百マイルのモーターウェイを静かに走ることもこなし、タイトベンドをスムーズに曲がる。ボディ・ロールもありふれたディーゼル・ファミリーカーのように大きくもない。フロントとリア・アクスルを駆動するクワトロ・システムによりグリップは非常に安定しており、限界をこえると安全なパワー・アンダーステアが顔を出す。スポーティなドライブとしては愉しいことはなにもないが、とにかく安全で安定しているのだ。

■「買い」か?

おそらく買いだ。但し、オプションのスペックに乗り心地とハンドリングは敏感に関連する。60000ポンド(773万円)近い価格となってしまうが、Sライン・トリムにスポーツ・ステアリングとスポーツ・リア・ディファレンシャルをオプションとして加えることをおすすめする。価格はBMW535dとほぼ同じぐらいの値段にもなってしまうが。

アウディはオプション・リストが豊富だ。従って、それらを上手く組み込めばBiTDiの標準仕様のスペック不足は補えることだろう。とはいうものの、完全にオプションを組んだアウディA6であっても、ダイナミックな魅力という点においてはBMW535dには敵わない。

アウディA6BiTDiは66.2kg-mのトルクを活かした、快適で有用で美しく調度された走りを楽しむクルマだ。われわれが望んでいたよりも、非常に普通のサルーンということができよう。そう、これはアウディA6であってS6ではないのだ。

(マット・ソーンダース)

アウディA6 BiTDi クワトロSE

価格 43,810ポンド(564万円)
最高速度 250km/h(リミッター)
0-100km/h加速 5.1秒
燃費 15.6km/l
Co2排出量 169g/km
乾燥重量 1790kg
エンジン V6 2967ccツインターボ・ディーゼル
最高出力 309bhp/3900rpm-4500rpm
最大トルク 66.2kg-m/1400rpm-2800rpm
ギアボックス 8速オートマティック/td>

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