シボレー・カマロZL1

公開 : 2012.05.29 16:49  更新 : 2017.05.29 18:36

■どんなクルマ?

シボレーカマロZL1は、これまでに生産されたカマロの中でも最も強力なバージョンだ。それはフォード・ムスタングのハイパフォーマンス・モデル、シェルビーGT500に対抗する目的で造られたモデルでもある。と同時に、ドラッグレース専用のチューニングが施された4シーター、リア・ドライブの1969年製カマロZL1をインスパイアしたモデルでもある。

とはいうものの、シボレーは新しいZL1に、一般路上とレース・トラック、両方で使用できるキャラクターを与えた。このモデルを毎日使用することが可能なモデルに仕立てあげたのだ。

その中心となるエンジンは572bhp、76.9kg-mのパワー、トルクを発揮するスーパーチャージドの6.2リッターだ。これはキャデラックCTS-Vに搭載されるものと同じだ。

ZL1はカマロSSの30%を見直したという。主にレース向けに、クーリング・システム、ディファレンシャル、クラッチ、ブレーキ、ダウンフォースを得るためのエアロダイナミクス面でのチューンアップがされている。レース・トラック向けの効率的なクーリング・システムと同様に、ZL1は,シボレーの第3世代のマグネチック・ライド・サスペンションが採用された最初のモデルでもある。また、電子制御補助によるパフォーマンス・トラクション・マネージメントも装着されている。それは、乾燥した一般道のモードから、サーキット・セッティングまでセッティングが可能であり、それは、そのままサーキットで使用可能だということを示している。

オプションとして選べるのは、オートマチック・トランスミッション、ホイール、そしてサンルーフぐらいしかない。

■どんな感じ?

ドライバーのフロントに広がるボンネットと、その上に見える巨大なパワー・バルジ、そして幅の広いホイールが、このシェビーのキャラクターを十分に伝えている。

アヴェオやクルーズと同様にキーを差し込み、スターター・ボタンを押してエンジンを指導する。すると、そのパワー・ユニットはおとなしいが気持ちのよいゴボゴボとしたサウンドで目覚める。

6速マニュアル・ギアを選択しスロットルを踏み込むと、スモール・ブロックのV8はぞくぞくするようなサウンドを奏でる。ローエンドのパンチと、踏み込むと同時に増してくるパワーは印象的だ。もし、あなたが、アメリカン・マッスルカーはその加速に関しては容赦ないが、ロード・マナーについては少々問題がありという誤解を信じているのであれば、それは大きな過ちである。

カマロはそれとはまったく正反対で、一般道においても非常に上品にリファインされているクルマだ。これはニュルブルクリンクの北コースで長い間テストされたことを示している。

このサイズと重さを持つクルマにしては、そのステアリングの素晴らしいこともあって、見かけと異なって素早い感覚がするのだ。

ハードにコーナーをアタックしても、その前方に大きなV8があるとは思えないほどで、アンダーステアが顔を覗かせることはない。コーナーの立ち上がりでは、リア・エンドがグッと姿勢を低くして加速を見せるが、パフォーマンス・トラクション・マネージメントをひとつだけアグレッシブなモードにすれば、僅かにテールを流したままの姿勢を保ったまま立ち上がる。

低速での乗り心地は、道の凹凸に反応してしまうが、それはZL1の20インチ・ホイールによるところも大きいだろう。

キャビン・レイアウトは、かなりコンベンショナルで、GMのパーツ・シェルフからそのまま来たようなデザインであり、若干安いプラスチッキーな感じがする。しかし、その余分のない装備はこのカマロZL1には似合う。光る飾りをキャビンに持ち込むことよりも、そのパフォーマンスを磨くことに対価が使われたと納得すべきである。

後部の小さな三角窓と、狭いリア・ガラス、フロントの太いAピラーなどによって視界は良くない。加えて長さが4863mm、幅が1917mmであるから、シボレーがパーキング・カメラを仕込んだことは納得できる。

ドライビング・ポジションはエクセレントのひとこと。レザー・シートも良いバランスで、サーキット・ドライヴィングでのサポートと、ハイウェイ・クルージングでの快適さが両立されている。ただし、ヘッドクリアランスは制限されている。

問題は燃費だ。7.0km/lを記録するといっているが、実際、われわれのテストした結果は3.8km/lであった。

■「買い」か?

残念ながら英国では手に入れることができない。現在はレフト・ハンダーしか用意されないという。もし輸入されたとすれば、アメリカでのカマロSSとZL1の価格を比較すると、58,000ポンド(730万円)程度となるだろう。

その価格が現実的なものとなったとしても、そのパフォーマンスを得るためには大きな出費が必要だ。それは法外な燃費を考え無くてはならないからだ。アメリカのハイウェイでは許されるのかもしれないが、英国でそれをドライブするのは一握りの人だけになってしまうだろう。

それでも、主にサーキットと短距離の直線コースをその舞台とするのであれが、そこには愉しい世界が待っていることは確かだ。そして、自動車の世界というものは、このカマロZL1が輝ける場所があるカラフルな場所でもあるのだ。

(マット・バート)

シボレー・カマロZL1

価格 58,000ポンド(730万円):予想価格
最高速度 290km/h
0-100km/h加速 4.0秒
燃費 7.0km/l
Co2排出量 389g/km
乾燥重量 1872kg
エンジン V8 6162ccスーパーチャージド
最高出力 572bhp/6100rpm
最大トルク 76.9kg-m/3800rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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