フォード・フィエスタST

公開 : 2013.03.01 19:26  更新 : 2017.05.29 18:55

■どんなクルマ?

最新最速のフィエスタが、このフォード・フィエスタSTだ。歴代フィエスタの中で0-100km/h加速が7秒を切る最初のモデルでもある。

179bhpのパワーは、このクラスのトップに比べれば10%ほど低いが、それでも4mのスーパーミニには充分で、1100kg(この原稿を書いている時点では正式な乾燥重量は発表されなかった)と予測されるボディ・ウエイトを力強く引っ張る。そのパワーは強力だが、桁外れというわけではない。それは、フィエスタSTの立ち位置を理解しなくてはならないかもしれないのかもしれない。

ルノープジョーと異なり、フォードは独立したスポーツラインを持っていない。従って、STやRSといったバッジだけでスポーツ・モデルとしている。そのスポール・モデルの中に、毎日の使用に耐えるSTと、ハードコアなRSという明確なラインがある。

フィエスタSTは、フォーカスSTのように愉しいが不快な乗り心地ではなく、速いが素直なクルマだ。

価格は17,000ポンド(238万円)からで、トリム・レベルは2つが用意されている。ST2は、ST1よりも1,000ポンド(14万円)高く、レザー・シート、DABラジオ、そして幾つかの装備が付く。

エンジンは1.6ℓの4気筒で、6速ギアボックスを通して前輪を駆動する。パドル・シフトはオプションでも用意されず、同時にメカニカル・リミテッド・スリップ・ディファレンシャルもない。それらは、RSの領域に任せるべき装備だ。

その代わり、フィエスタSTには、インサイドのホイールにブレーキを掛けて安定させるトルク・ベクタリング・コントロールが、LSDと同様の動作をするものとして採用されている。

サスペンションは、スタンダード・モデルよりも15mm低く、スプリングとダンパーが固められる。ホイールは17インチで、205/40サイズのタイヤが組み合わせられる。

パワー・ステアリングは電気アシスト付きで、サーボトロニックのように切り込むにつれて機敏さを増すのではなく、線形のもので、ロック・トゥ・ロックは2.4回転だ。

■どんな感じ?

今回、われわれのテストは、ベルギーのロンメル実験場のまわりに限られていた。しかし、ロンメルの実験場には様々な路面が表現されているので、本当の道よりもしっかりとしたテストができるかもしれない。

ドライビング・ポジションは、概ね良いが、理想的というわけではない。低く腰掛けると、肘をかなり曲げないといけなくなり、腿との間に結構な隙間ができてしまうからだ。ベストなポジションを得るには、シート・ハイトを若干高く設定し、背もたれをやや倒し気味にすることだ。しかし、これもいちゃもんレベルのことといってよいのだろう。

フィエスタSTは充分に快適なクルマだ。キャビンは、気持ちのよいデザインが施されたステリング・ホイールをはじめ、居心地は非常に良い。

エンジンには静かに火が入り、スロットル・アクションとギアシフトは非常に滑らかだ。

ギアシフトは若干の機械的抵抗感がありが、非常に正確で、スロットル・レスポンスも良い。

乗り心地は固いが、ダンピングの効いたもの。サスペンション・ストロークが大きいのか、垂直方向の運動は相当量だが、激しく上下動をするわけではない。ボディ・ムーブメントはタイトで、簡潔な動きを示す。その動きの感じは本当に心地よいもの。それで充分に速い。

シフトはスムーズで、6500rpmのレブ・リミット付近の吹け上がりは気持ちが良い。フォーカスSTのように、インダクション・ノイズを大きくするようなものがボンネットの下にあるが、その音自体は人工のものではなく、リアルなサウンドだ。しかも、フォーカスSTほどうるさくはない。

高速巡航は、静かで素晴らしい安定性と快適性を持つ。

ステアリングは、油圧アシストと同等の適切な重さと滑らかさを持つ。電気的なアシストが付いているが、それが非常にリニアな感じをもたらしてくれるのだ。コーナリングは機敏で、2速で回るようなコーナーでも非常に良いトラクションを示してくれた。また、ミッド・コーナーでもそのボディ・コントロールは素晴らしく、シャシーは常にコントローラブルであった。

フィエスタSTのフロントは非常に食いつきがよく、刺繍的にはドライ路面であればリア・ホイールが浮く状態になる。ルノーのようにオーバーステアになるわけではない。

■「買い」か?

毎日ドライブすることのできるスーパーミニを探しているのなら、フィエスタSTは最適な1台だ。私は、この1ヶ月以内にクリオ・ルノースポーツとプジョー208GTIに試乗することになっている。これらのクルマがフィエスタSTよりもはるかに優れているかもしれない。しかし、もし同じレベルであるのならば、その価格からしても、フォード・フィエスタSTは間違いなくおすすめだ。

(マット・プライヤー)

フォード・フィエスタST

価格 16,995ポンド(238万円)
最高速度 220km/h
0-100km/h加速 6.9秒
燃費 17.0km/ℓ
CO2排出量 138g/km
乾燥重量 1100kg(予想値)
エンジン 直列4気筒1596ccターボ
最高出力 179bhp/5700rpm
最大トルク 27.5kg-m/1900rpm-4000rpm
ギアボックス 6速マニュアル

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

フォードの人気画像