マツダ2 EV レンジ・エクステンダー

公開 : 2013.12.13 21:30  更新 : 2017.05.29 19:13

■どんなクルマ?

マツダ2(日本名:デミオ)がEVになって進化を続けている。このモデルは、電力量20kWh、電圧346Vのリチウムイオン・バッテリーが主な動力源となり、航続距離を伸ばすためのレンジ・エクステンダーとして、ガソリン仕様のロータリー・エンジンと発電機を備えている。

日本ではすでに、マツダ2のEVが自治体や法人向けにリース販売されている。それゆえ、このレンジ・エクステンダー・タイプが、トランクの床下に発電専用の小ぶりなロータリー・エンジン・パッケージを詰め込むというのは、驚くほど見事なエンジニアリングと言える。

シングル・ローターのエンジンは排気量330ccで、エンジン回転数を2000rpmの一定速度に保ち、出力は26psを発する。

このロータリー・エンジンは、燃料タンク、発電機とともに後部トランクの床下に搭載され、スペース効率を高めることに成功している。ユニットとしてのサイズは信じられないほど小さく、立派なスーツケースなら入ってしまいそうなほどだ。

バッテリーパックはキャビンのフロア下に配置され、エンジンベイの中にある102psを発するモーター、レギュレーター、制御装置へと電力を供給する。

それほど大きくないバッテリー容量を考慮して、このクルマの発電専用エンジンは時速10km/hという割合に低速域から介入を始め、航続距離を伸ばすことに貢献する。

もちろん、こうしたテクノロジーを搭載することは車両重量を増やしてしまう。マツダ2のベースモデルが1000kgあまりの車重であるのに対して、バッテリーのみのEVモデルは100kg前後の重量増となる。更に発電専用エンジンを搭載したこのモデルはさらに100kgほど重くなり、とうとう1300kgに届いてしまった。

BMW i3 レンジ・エクステンダーと同様に、このマツダ2 EV レンジ・エクステンダーの航続距離は、燃料タンクの容量に依存している。偶然にもその値はBMWとぴったり同じ9ℓとなる。

カーボンファイバーをベース構造とするBMW i3は、CO2排出量が13g/kmと発表されている。マツダは、この初期プロトタイプモデルの測定は実際にはできていないと強調したうえで、その値がBMWに匹敵する15g/kmになると言っている。

■どんな感じ?

今回はわれわれに許されたのは非常に短時間のテストであった。初期プロトタイプモデルということもあり、確固たる結論を出すよりも、走行インプレッションの報告に留めるのが相応しいと考えている。それでも全体の印象としては、新型の魅力的なパワートレインはかなりの将来性を感じた。

他のEVと同じように、このクルマは停止状態から即座にパフォーマンスを発揮でき、滑らかで静かな走りを提供する。バッテリーと充電専用エンジンから得られるそれほど強力とは言えない出力のおかげで、穏やかな加速を味わえる。しかしマツダが見積もった0-100km/h加速、10.8秒というのは少し外れているように感じた。

スロットルペダルのオン、オフについて改良があったように、操作への反応は良好である。こうした初期段階にあってもモーターや制御装置がこれほど精度の高い動きをするのは、マツダの高度な知識を物語って余りある。

また、EVと同等のスポーツ・ボタンが存在し、モーターが回生モードに入るとブレーキング効果を得ることができる。しかし、嬉しいことにマツダは無理してまで減速エネルギーを得ようとしていないのだ。他のEVのようなノーズダイブするほどの不必要な減速回生がないために、マツダのブレーキングはより自然な感覚である。

今回テストしたプロトタイプモデルは、雑音や振動への対処にそれほどの時間を掛けていない。このため、レンジ・エクステンダー用ロータリー・エンジンが収まるトランク下部からは、一定の速度でもコトコトと音が発生し、冷蔵庫のコンプレッサーを思い起こさせるのだ。こうした騒音はキャビン後方では目立っていたが、前方ではほとんど感じられなかった。

マツダは、ロータリー・エンジンが発するノイズの処理として、静かになるよう抑制するか、魅力的なサウンドにするのかを判断しなければならない、と言っている。長期間を要する開発プログラムにおいて、取り組むべき新しいタスクがまた一つ増えたということになる。

さらに、コーナリング中や路面の起伏を乗り越えたときには、車体後部が重くなったことを感じてしまう。まるでハッチバックに荷物を満載したときのように、サスペンションが苦しい状況に置かれているのが分かるのだ。

レンジ・エクステンダー式のバッテリーパックという重量増加に対処するため、マツダはリアのスプリングを改良している。しかし、他とは異なる重量配分を相殺するにはシャシーとステアリングの再考が必要と思われる。

■「買い」か?

このグレードは今にも手に入るというわけではなく、イギリスでの販売は有るか無しかというところだ。しかし、見事なエンジニアリングと画期的なソリューションがマツダの取り柄であるから、答えは「買い」ということになるだろう。驚くほど低いCO2排出量を掲げているこのクルマの魅力的なコンセプトには、大きな未来が開けているように思えてならない。

(ジュリアン・レンデール)

マツダ2 EV レンジ・エクステンダー

価格 NA
最高速度 129km/h
0-100km/h加速 10.8秒
燃費 NA
CO2排出量 15g/km
乾燥重量 1300kg
エンジン モーター + 300ccロータリー・エンジン
最高出力 100bhp
最大トルク 15.2kg-m
ギアボックス ダイレクト

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