ミニ・ペースマン JCW ALL 4

公開 : 2014.07.08 23:50  更新 : 2017.05.29 19:14

■どんなクルマ?

新しくフェイス・リフトが施されたミニ、2ドアのペースマン・ラインナップにおいて最も速く、最もパワフルで尚且つ最も高価なモデルが今回ご紹介するジョン・クーパー・ワークスのペースマン ALL 4である。

イギリスでは既に人気を博している新しい顔のミニと並行して£29,440(515万円)のプライス・タグを掲げる予定であり、クロスオーバーなカタチも好きで更にパフォーマンスも欲しいという人々をマーケットとしライバルにはアウディQ3や新顔のメルセデス・ベンツ GLA250スポーツなどが挙げられる。

4月の北京モーターショーの際にベールを脱いだミニ・ペースマンは今回ジョン・クーパー・ワークスとして発表されるにあたり当然ながら差別化が図られた。

巧妙にデザインが変更されたフロント・グリルには横方向に赤のストライプが追加され、新デザインとなった18インチのアルミ・ホイールを装備する。今となってはありきたりのラインナップとの声も聞こえてきそうではあるが、オプションではデイライト機能付きのLEDヘッドライトとフォグライトを選択することが可能となった。

新素材の導入により室内のロードノイズは格段に減少しているのだが、悲しいかなミニとしての歴史にこだわりすぎるが故のレトロ調イメージのインテリアに関して真新しさは微塵も感じる事が出来ない。

スタイリングは手直しが行われ、ジョン・クーパー・ワークスのペースマン ALL 4の名に恥じぬパッケージングが為された。ターボ過給される4気筒の1,6ℓガソリン・エンジンが最大出力223psと最大トルク28.0kg-mを発生させることに変わりはないがチューニングにより標準のクーパーSペースマン ALL 4よりも29psと4kg-m分強力である。

トランスミッションに関しては伝統的な6速MTか多版クラッチ採用の6速ATであり、フロントとリアに駆動トラクションを0から100まで状況によって自動配分する4輪駆動システムが採用された上に電子デファレンシャルも備える。

■どんな感じ?

今回の改良によりオンロード上での印象には少し変化があった。夢中になれるほど機敏で且つ自然でありドライブする歓びで満たされる。

電子制御されたステアリングは直進状態からほんの少し切り始めた時にダイレクトでかなりのクイックさが伴うが、更に切り足していくと奥は次第にマイルドとなるためコーナリングの最中に修正舵を切る必要がありそうだ。

しかしながら標準のミニに比べて高い車高の事を考えればこの車のボディ制御は立派なものである。タイトなコーナーを抜ける際に先ほど指摘した様な感覚はあるがボディの動きは素晴らしくコントロールされる。

4輪駆動と電子デファレンシャルの制御により新型ミニの走りはタイトなコーナーをリズムよく駆けぬける際も簡単に挙動が破綻する事はなく、コーナリング中においても高いレベルのグリップ性能と強いトラクションを発揮する。

乗り心地も特筆すべきものであり歴代最高のジョン・クーパー・ワークスであろう。

時々鋼鉄製のボディを通じて振動を伝えてくる事があるものの、非常にマナー良く路面を追従し、アスファルトの窪みや段差を上手くやり過ごす路面追従性を備えている。

この車はエンターテイナーである。しかしながらもはや “ミニ” ではない1400kgという車体重量により目を見張るほど速いわけではないものの、ギア・レバーの下に決まり悪く収まったスポーツ・ボタンを押せばアクセルの反応がより攻撃的に変化する。

回転を引っ張ればターボ特有の炸裂音も聞こえてくるが、ジョン・クーパー・ワークスの名のもとに設けられたスポーツ・ボタンと思えば正直不十分なものではないだろうか。

公式発表によれば0-100km加速は6.8秒で80-120kmの追い越し加速は5速固定で7.6秒とのことであり、決して悪くない数字ではあるもののライバル勢から抜きん出てはいない。参考までに標準のクーパーSペースマン ALL 4の加速タイムはそれぞれ7.6秒と9.1秒である。

今回のテストで失望した部分もまた記さねばなるまい。高速道路上を高いギアを保って一般的なスピードで巡航する際、ターボ過給される4気筒1.6ℓガソリン・エンジンの排気音は褒められたものではなく、むしろ苛立たしかった。それにオーバー・スペックなタイヤからのロードノイズは路面状況が良い道路上においても耳を付き、今回ミニが採用した遮音の新素材導入という朗報(Aピラー付近の風切り音低減には相性が良いようだ。)を打ち消してしまうものである。

■「買い」か?

エンスージアストの観点から申し上げるならば、持ち合わせているのは強いグリップと素晴らしいトラクション性能、強固なハンドリングに驚くべき乗り心地で走りの要素が凝縮されていると評価できよう。

しかしこの車が515万円(£29,440)と知った時、他の選択肢が脳裏をよぎる可能性は大いにある。確かにいい車ではあるものの総合的に見てこの外見の3ドアのハッチバックでパフォーマンスは並みとくればブランドだからこその成せる価格設定であろう。また今回のロードノイズは繰り返すが巡航の速度域で更にスムーズさで有名なデンマークの道での出来事である。

利口な顧客は124万円(£7,090)安い標準のクーパーSペースマン ALL 4を購入し大幅に浮いた金額の使い道を考えるはずだ。

(グレッグ・ケーブル)

ミニ・ペースマン JCW ALL 4

価格 £29,440(515万円)
最高速度 210km/h
0-100km/h加速 6.8秒
燃費 14.7km/ℓ
CO2排出量 165g/km
乾燥重量 1400kg
エンジン 直列4気筒1598ccターボ
最高出力 223psps/6000rpm
最大トルク 28.0kg-m/1900rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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