メルセデスE350dエステートは退屈？　言いたい人が、言えばいい

Eクラスは、自分で買えると思えた方に属する。とりわけE350dエステートというグレードは、ファミリーカーに必要だと思える要素をすべて兼ね備え、快適性に華やかさや贅沢さが渾然一体となったレアケースで、ほぼ理想の一台だった。

しかもそのスピードやグリップ、ハンドリングといった走行性能が、300psオーバーのホットハッチや、570psのスーパー・スポーツについていけるレベルであることが、前日のテストで証明できたのだ。

しばらく走ると、ようやく文明と呼べるものが眼前に現れた。ランチとガソリン補給ができ、さらには洗車設備まで備えた村だ。

そこでリフレッシュしたわれわれは、今回のルートでもこのうえなくすばらしいこと請け合いの、ブラックマウンテンへ続く道へとクルマを向けた。

路面には無粋な白線など存在せず、広くはないが2台が横並びできるだけの幅はある。素晴らしい写真が撮れるロケーションだ。見通しも良く、昼下がりのドライブに没頭するにも絶好だ。

しかしそこでは、Eクラスの大きさと重さを実感することになる。エア・サスペンションはバンプ・ストッパーと干渉して、穏やかながらもボディを突き上げるようになり、快適に走れる領域の限界が見えてくる。

ほかのふたりが駆るクルマなら、そんな体験に邪魔されず、もっとこの道を楽しめたに違いない。

ならば、どちらかと乗り換えればいいだろうって?

ご冗談を。2日間で300km以上を走ったわけだが、この快適なシートや満タンで1000km近く走れる燃費、レーダー・クルーズコントロールのなんとありがたかったことか。退屈と笑わば笑え、だ。

あたりに夕闇が降りる頃、最後の30km弱を走りきり、疲労と埃にまみれ、しかし歓びに満ちたわれらキャラバンは、ベツレヘムの祝福を受けた。

われわれはしばしのあいだ、身重の女性とロバのいるクルマを3台置けるほどの納屋を探したが、そんなものはどこにもなかった。

まあいい。大事なのは、われわれがそこに辿り着いたと言うことだ。けれども、われわれ3人が、スリーポインテッド・スターの支えがなくてもそれを成し得たかについては自信がない、ということだけは言わせてもらいたい。