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タイミングベルトについて考えて見る 第一回

多くのイタリア車。ランチア・デルタに限らず、アルファ・ロメオのV6エンジン(アルファ・ロメオのオリジナルV6)はカムシャフトをゴムベルトで駆動しています。

アルファ・ロメオで言えばジュリア系に搭載されている4気筒エンジンはカムシャフトを金属チェーンで駆動していましたが、V6エンジン以降にアルファ・ロメオに搭載された新設計のエンジンは4気筒エンジンもゴムベルトによる駆動になりました。

そもそも、なぜゴムベルトを使用するようになったのかと言うと、それまでの金属製チェーンに比べて、軽量、静粛、安価といった理由が挙げられると思いますが、一方で最大の問題はその耐久性で、どういうわけかイタリア車に使われているこのベルトの耐久性は他国(日本車を含む)の同様のものに比べてとりわけその寿命が短いのです。

そして、このタイミングベルトが切れたときのダメージは大きく、エンジンのバルブを含めたヘッド部分をオーバーホールしなければならないことから、他のどの部品よりもその交換のタイミングに神経を使わなければならない部品であると言えます。

一般的なイタリア車のエンジンは、その性能を追及するためにバルブとピストンのクリアランスが狭く設計されています。そのためタイミングベルトが切れると、バルブを突いてしまうことになるのです。

同じゴム製部品でも、タイヤは磨耗すれば目視で分かりますし、乗り心地や路面グリップというフィードバックからドライバーはその寿命を感じ取ることが可能です。ゴム製ホース類も漏れれば分かりますし、同じく目視によりその亀裂を発見することが可能です。

同様にエンジンマウントやブッシュといったゴム部品も振動や乗り心地といったフィードバックによりドライバーにその状態を伝えてくれるのですが、このタイミングベルトはその機能の重要性と、問題が起こったときの致命的なダメージにもかかわらず、その状態のフィードバックが全くないというところに最大の問題があるのではと思います。

今回は多くのイタリア車オーナーを悩ませているこのタイミングベルトについて少し考えて見たいと思います。

まずはちょっとお勉強ですが、そもそもゴム製品に限らず物性的にその本来の特性がなくなって行く原因は大別すると三種類に分けられます。

まずは、「劣化・老化」でゴム製品の場合には酸素・オゾンによる酸化作用。放射線(光、X線など)による化学作用。そして熱による分子の切断がこれに当たります。

劣化、老化の最大の特徴は外力の作用がなくても起こるということで、言い換えれば自然に年月が経てば使っていなくても劣化・老化は起こるということです。

そして次に「疲労」ですが、この疲労は外力の作用によって引き起こされるものです。一般的に疲労は、「小さな外力が動的または静的に一定時間加えられることで材料の機能が徐々に低下する現象」と定義されています。つまり、「劣化・老化」と「疲労」は互いに影響しあう関係にあると言えます。

外部からの応力が集中したり、その原因となる劣化・老化による材質の変化、ゴム材料そのものの潜在的欠陥や異物と接する箇所や傷といった要素が「疲労」を促進し、「疲労」が促進するとさらに「劣化・老化」が早まるということです。

そして「疲労」を促進するもう一つの要素が「磨耗」です。

一口に磨耗と言っても様々な種類があります。まず、「アブレシブ磨耗」と呼ばれる硬くて鋭い突起がゴムの表面を引っ掻くことによる磨耗。

次に、「凝着磨耗」と呼ばれる滑らかな相手面との摩擦で生じる磨耗。そして、「疲労磨耗」と呼ばれるゴム表面の疲労によって生じる磨耗。加えて、「粘着磨耗」と呼ばれる摩擦によって生じた低分子量のゴムによって摩擦面が覆われ相手面との相互移着を生じるもの。また、「パターン磨耗」と呼ばれるゴム表面にアブレーションパターンを生成しながら磨耗が進行するもの。最後に、「ころ状磨耗粉生成による磨耗」と呼ばれる、消しゴムのような磨耗があります。

まとめると、「劣化・老化」が起こると「疲労」が促進され、さらに「磨耗」することにより「疲労」が進み、「疲労」が進むと「劣化・老化」も早くなる…。という相互作用のサイクルがゴム製品には当てはまるということです。
しかも普遍的な特性劣化の規則性がないことから、個々の使用環境によってその特性劣化のスピードが異なり、交換のタイミングを判断するのが難しいのがゴム製品の特徴なのです。

ここまでお勉強?すると、タイミングベルトなるゴム製品がいかにこのサイクルに晒されているかが良く分かるのではないでしょうか。むしろカムシャフトギアを駆動するためにはゴムベルトなど断じて使ってはいけない…とさえ思えてしまいます。
しかし、残念ながら使われてしまっているものはどうしようもありませんので、次回はこのタイミングベルトとどう付き合って行くかを考えてみたいと思います。

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