[アバルト70年の歩み]特別コンテンツ

ホンダS660

2015.03.31

パワーユニット

エンジン本体は、すでにNシリーズで採用され多くの実績を持つS07A型。正式発表前、一部では軽自動車の自主規制値である64psを上回るのではないかという期待が高まったが、64ps/6000rpmを発揮するとアナウンスされた。

エンジン本体はNシリーズ用と基本的に同じながら、S660に合わせてターボチャージャーを新設計。Nシリーズ用に比べレスポンスに優れ、アクセルを軽く踏み込んだパーシャル状態からさらに踏み増した場合など、アクセル操作に対して鋭くパワーとトルクが立ち上がる感じを楽しめる。元来、扱いやすさに定評のあったエンジン特性はそのままに、高回転までスムーズに回るホンダらしいエンジン・フィールを実現。ベアリングハウジングやターボンなども小型化したことで、Nシリーズのターボチャージャーに対して約12%の軽量化を達成している。

ギアボックスは6速MTと、歴代エス・シリーズそしてビートでは用意されなかった、2ペダル式のCVTという2種類をラインナップ。MTでは1〜5速のギアレシオをクロス化することでエンジン回転数をいつでもトルク・バンド内に納めやすいものとした。そのうち2速は、かつてのビートの1速とほぼ同じ加速性能を確保しながら、レッド・ゾーンの始まる7700rpmでは75km/hとなるギア・レシオに設定。S660のメイン・フィールドとも呼べるワインディングでは、2速だけで30km〜60km/hをカバーできるという。

CVT車では、MTとエンジンの仕様も異なり7000rpmからレッド・ゾーンが始まる。パワー&トルクの数値に変更はない。インパネの左側には “SPORT” と記されたスイッチが備わり、これを押すことで “SPORT” そして “DEFAULT” というふたつの走行モードを切り替えることができる。これはドライブ・バイ・ワイヤの設定や車速/エンジン回転数の相関関係を変化させ、異なるドライビング特性を与えたもの。

エンジン・スタート時に選択されるのは、言葉どおり “DEFAULT” モード。市街地での一般走行を念頭においた設定で、燃費性能にも優れる。”SPORT” モードを選択すると、メーターのカラーが赤基調に変化してスポーツ・ムードを高めるほか、瞬間燃費計の表示部分がブースト計に切り替わる。燃費指向からパワー重視へと変更されたことを象徴している部分だ。

このほかCVT車にのみアイドリング・ストップ機構が備わり、JC08モードの燃料消費率はMTが21.2km/ℓに対してCVT車は24.2km/ℓという優れた数値を実現している。

シャシー

オープンスポーツとしてもっとも大切なボディ剛性を高めるため、S660では “一線入魂ボディ” と名付けられたシャシーが設計された。ルーフ部分を持たないために、高剛性・高強度な設計にすることができないと言われるオープンカーのボディだが、S660では “骨のつながり” を重視。直線もしくはなめらかな曲線でボディ骨格を構成し、軽量さと高い剛性を両立させている。

その高剛性ボディの中心となっているメイン・ボディでは、センター・トンネルの部分を二階建て設計とした。車体の中央に位置するセンター・トンネルは、内部に冷却系の配管やワイヤー・ハーネスを通す必要性から “コの字型” とするのが一般的だが、そこを引張強度590MPa級の高張力鋼板を用いた二階建てのセンター・トンネルとして剛性を高めている。

またサイド・シル部分にも、この引張強度590MPa級の高張力鋼板が用いられ、ボディの曲げ剛性を確保。他の骨格部材と結合されるフロントとリアまわりも面が途切れることなく、スムーズな形状としている。このサイド・シル側面は軽量化と高剛性化のため、ボディ外板の一部を兼ねている。そのほか特徴的な部分として、左右のリア・サイドフレームを連結し、リア・サスのアーム類を支持するサブフレームをアルミ・ダイキャスト製とすることで剛性を確保した。

シャシー裏側には、車体の前後にV字型のブレースを装着して補強。フロント・ブレースはダッシュボード下部のクロスメンバーとも結合され、さらに剛性を高めている。こうして完成したS660のメイン・シャシーは、同クラスのオープン・スポーツカーを大幅に凌ぐ曲げ&ねじり剛性を達成。静ねじり剛性としては、S2000を凌ぐ数値を実現した。

サスペンション形式は4輪マクファーソン・ストラットを採用。ブレーキは4輪ディスクとされ、前後とも260mm径のブレーキ・ローターを装着する。キャリパーのボディ形状や取り付けるナックル部分の形状を工夫したほか、ブレーキ・ローターとペダルの剛性を高めたことでペダル・タッチの剛性感をも高めている。

組み合わされるタイヤはS660のために専用開発された”YOKOHAMA AD08R”。フロントが165/55R15、リアは195/45R16という前後異型サイズを装着する。駆動輪であるリアタイヤに、フロントより大きなものを採用することでリニアに、安定したコーナリングができることを目指した。なおS660にはベーシックな “β” と内装の装備などが充実した “α” というふたつのグレードが用意される。両グレードでは異なるデザインのホイールが装着されるが、サイズは変わらないため、装着タイヤも同一となる。