社会人1年目、ポルシェを買う。

2016.05.07

第9話:それで結局ポルシェはどうしよう。

数台の試乗を終えて、最後にMTをみにいき、
試乗のタイミングを伺っているあいだに、
1ヶ月が経ぎ去ろうとしている。
横須賀のMTの996は売れずにまだある。

実際にポルシェに触れたことで、
完全に舞いあがっていたけれど、
「太朗よ、お前、お金用意できてるの?」
というセンパイの冷静なひとことで、
現実世界に引き戻されてきたのだった。

ちょっと計算をしてみることにする。
たとえば250万円のポルシェ996を買ったとしよう。
それを60回払いで払うならば、
たとえば3.9%の金利がのって、
支払総額は276万円まで膨れあがる。
月々にして4万8千円くらいか。

駐車場は2万円はかかるだろう。
あとは保険代。これも2万は見ておいた方がいい。
合わせて9万円。

ふと気づく。ガソリン代もあった!
通勤は電車だから、
遊びの目的で乗るのは主に週末だとしても、
やっぱり2万円程度は見ておいた方がよさそうだ。
となると11万円。

あと僕の場合(すでにお察しの方もいるかもしれないが)
‘魔の60回ダブル・ローン’ がまだ尾を引いている。
うち片方は5月末にめでたく終わるが、
たしかもう一方は来年の夏くらいまで、
ていねいに口座から1万円そこらが引き落とされる。

実際に自分の生活を考えると、
友人との飲み会や、普段の食費、日用品にお金は飛ぶ。
洗車場の料金もボディブローのように効いてくるし、
タイヤが減った時、オイルを交換するとき
どうすればいいんだろう?

このままいくと、
‘買ったけど、乗るお金がない’ という
惨め極まりない生活が待ち構えているではないか。

三軒茶屋駅からオフィスに向かって、
毎朝246沿いを歩くと、たった5分のあいだに
少なくとも2、3台は渋谷方面に
颯爽とポルシェが駆け抜けていく。
目を凝らしてみると、どんなオーナーも
なんだかお金をもってそうに見える。

社会人1年目の若造にはポルシェなんて
結局は遠い世界のクルマなのかな……などと考えると
まことに勝手ながら日本中のポルシェ・オーナーを
憎らしく思いはじめたりするので始末がわるい。

どうしたらいいのかを考えに考えて、
思いついたのは、そもそもの得意科目である
‘他力本願’ をまっとうするというものだった。

すぐに父親に電話。
「親父よぉ、はじめて買ってくれたトミカ覚えてる?」
といった具合に、
まずは懐かしき日々の思い出をもちだす。
(ちなみに1台目は356スピードスター、
2台目は930ターボ。いずれも赤。)

これだけでは足りないので、
「長いあいだ学校にいかせてくれてありがとうね」
などという、面と向かっては絶対いえないことをいう。
「僕の場合、ふつーの人より2年長く大学にいったから
 100万円多くお金を払ってもらったことになるなぁ」
実際に金額がでると、電話の向こうで、
“こいつなんか悪いこと考えてるな”
と身構えているのがわかる。

「ところで、たとえばポルシェ買うとするじゃない?
 あれって値段下がんないから、
 たとえば120万円だしてくれたら、売るときに
 同じ金額+25万円で返せるとおもうんだなぁ」
われながら、もうこれは詐欺師である。

「あほか」ガチャン!
そもそも、親父もポルシェが欲しいのに、
どうして愚息に返ってくる当てもない金を
渡さねばならないのか。考えてみれば当然だ。

しかし、行動をとってみることで、
追加のアイデアが湧いてくるもの。
あともう2人、口説くべく人を思いついた。
 
 
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AUTOCAR JAPAN 編集部 上野太朗

1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測という、いわばエリート・コース(?)を歩む。学生時代はフィアット・バルケッタ→ボルボ940エステート→アルファ・ロメオ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ・ロメオ156(V6)→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かした。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

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