社会人1年目、ポルシェを買う。

2016.05.18

第12話:いよいよ来る(らしい)、僕のポルシェ!

ローンの審査をなんとか通過し、
あっという間に明くる日がきた。
今日はポルシェが自分の手元に来る日だが、
実感がまるでない。

午前中、朝いちばんに世田谷信用金庫の窓口にいき、
最終的な書類を何枚か書く。
合計で8回くらい印鑑をついたのだけど、
最初の1回目をつく寸前まで、
「この印鑑さえつかなければ、
 これまでどおり平穏で
 それなりに充実した日々がおくれるよな」
と本気で考えた。

「たしかに笹本編集長をはじめとする諸先輩方に
 強力なアシストをしていただいたぶん、
 ここですべてを放棄するのは
 たいへん申し訳ないけれど、
 きちんと謝りさえすれば理解してくれるはずだ」
とも。

同時に1年間クルマがなかった、
何かがもの足りなかった生活や
物心ついたときから憧れてきたポルシェというクルマ、
それに、ポルシェを自在に操る先輩方の姿が浮かぶ。

おそらくこれから、難多き日々がはじまるのだろう。
色々な面で自由もきかなくなるはずだ。
友だちからの誘いを断ることもあるかもしれないし、
永遠につづくかのように思えるローンに、
嫌気が差してくることもあるはずだ。

だけど、今、ポルシェを買うことで、
ひとつ勝負をして、ひと回り大きくなりたい
と思った。僕だってそういうことを考えるのである。
「一発がんばってみるか」ということで、
ギュッと印鑑を押した。あぁ〜。

うれしさよりも、プレッシャーだとか、
肩に重くのしかかる ‘何か’ を感じた買い物は
これがはじめてである。

いろいろ考えている場合ではない。
午後のクルマの引き取りがせまっている。
オフィスにつくやいなや、
トンカツ先輩(のちのちご紹介することになろう)の
クルマに乗せていただき、ルマン・ガレージへ。
そこから横須賀に向かい、
‘シャカイチ号’ をピックアップする。

トントン拍子でコトが進んだゆえ、
もちろん保険にもまだ加入していないから、
帰りはルマン・ガレージの北島さんに運転していただき
僕はトンカツ先輩のクルマの助手席から
写真をパシャパシャと撮りまくった。

撮れば撮るほどふつふつと嬉しさがこみあげてくる。
うしろから見ると、上屋からCピラーを介して、
リア・フェンダーへとつながるヌルリとした表面を
シルバーの塗装がより一層引きたてているのがわかる。
リアのウイングがあがったりさがったりしている。

 
「太朗ちゃん、あれ君のクルマだねぇ〜
 いいねぇ〜おいら羨ましいよぉ〜」とトンカツ先輩。

あれは僕のクルマだ。僕のポルシェだ。
(まだ名義変更してないけど、
まだまだ支払いつづくけど。)

たしか北野武さんも憧れのポルシェを買ったときに、
弟子にポルシェを運転させて、
ご自身は別のクルマから見ていたなんていう
逸話を聞いたことあったな……
自分を北野武さんにかってに投影させて、
ひとり、静かだけどグツグツと煮えたぎるような
満足感に、ずっぽりと浸りきっていた。

こんなにうれしいことってあるんだなと、思った。
 
 
※今回も最後までご覧になってくださり、
 ありがとうございます。

 ようやく、手元に!
 
 今日ばかりは、
 [email protected] まで、
 お祝いのメッセージをお待ちしています。
 もちろん、なんでもないメールだって
 お待ちしております。

AUTOCAR JAPAN 編集部 上野太朗

1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測という、いわばエリート・コース(?)を歩む。学生時代はフィアット・バルケッタ→ボルボ940エステート→アルファ・ロメオ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ・ロメオ156(V6)→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かした。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

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