コラム&エッセイ

2016.08.29

クルマ漬けの毎日から

マイ・ファースト・フェラーリ・ウィークエンド

My first Ferrari weekend for a while, spent in a California T

 
フェラーリのカリフォルニアTハンドリング・スペチアーレをしばらくの間テストドライブすることになり、最初の週末を過ごした。この手のクルマがどのくらい変化しているかを知ることは興味深い。このカリフォルニアTはメルセデス・ベンツSLの手軽さと利便性を備えていながらも、フェラーリらしいクルマだ。7速パドルシフト・ギアボックスは素晴らしいし、3.9ℓV8ツインターボ(552bhp)のエンジンはエンジン・オブ・ザ・イヤーの名にふさわしいし、サイドシルが高いコクピットは長距離ドライブをしても居心地がよい。また軽くてクイックなステアリングは私の運転にぴったり合っている。

 
編集部(英国版)のカリフォルニアTは派手な黄色で、このクルマをひときわ目立たせているが、ブラックのハードトップの開け閉めに関係なく見た目はいつも素晴らしい。だが、高速道路ではほとんど思うように走れなかった。いつもだれかがこのクルマが気になって近づいて来るからだ。近くを走るクルマに乗っている子供達がカリフォルニアTの写真を撮ろうとしたり、よく見ようとして急にスピードを上げたり落としたりするドライバーもいる。帰宅後すぐに、PistonHeads(自動車情報ウェブサイト)の中古車情報をチェックした。走行距離が少ない個体の場合、カリフォルニアTの価格はまだ8万ポンド(1070万円)を超えている。

 

 
フィアット・パンダが今年のヨーロッパのAセグメントの販売で目下第1位を走っていることを統計を見ていて知り、少しぞくぞくした。パンダのヨーロッパでの販売台数は現在約74,000台で、弟のフィアット500を上回っている。パンダと500のフィアット兄弟は、他のAセグメントのモデルを大きく引き離しており、この2モデルを合わせた販売台数はなんと約142,000台になる。次に多いのはフォルクスワーゲンup!だが、ヨーロッパでの販売台数は35,000台と期待外れの結果になっているようだ。

1年前に私はパンダのツインエアを長期テストで25,000mile(40,250km)運転したが、あのパンダが旅立って行った時は何とも寂しい気持ちでいっぱいになった。以前よく、ヨーロッパで仕事を終えて帰って来る飛行機の中で、空港近くの駐車場で小さなツインエアが私を待っている姿を思い浮かべたものだった。それに、キーを回してツインエア独特のエンジン音を聞くのが待ち遠しくて仕方なかった。何人もの人から「人の好みはさまざまですからね」と、まともな感覚ではないかのように言われたが、個人的にはまんざら悪くない気分だった。

 

 
この日曜、どうしてもシェルスレイ・ウォルシュ・ヒルクライム(イングランド西部のウースターの近く)に行かずにはいられなかった。その理由は、ハンス-ヨアヒム・シュトックJr が、彼の父が80年前に駆ったアウト・ウニオンのグランプリカー(6.2ℓV16、500bhp)に乗り、その見事な走りを再現するイベントが開催されたからだ。シュトックJrの運転技術はじつに素晴らしかった。彼の父が1936年にもっとμの少ない路面で走った時ほど、ドリフトを多用しなかったけれど。

歴史を再現するという特別な機会であったとはいえ、アウト・ウニオンのエンジンサウンドは驚異的だった。‘シュトッキー’ (コメンテイターたちはシュトックのことをこう呼んでいた)は観客の暖かさに感極まって涙した。世界最古のヒルクライムコースのシェルスレイだからこそ、人々にこういう感動を与えられるのだろう。

 

 
よいクルマには、隠し芸が必要だ。義母のスマート・フォーツーを運転して近くの街にでかけた時、偶然このことを再認識した(私はスマートの街中での軽快感とラグジュアリーカーのように快適なところが気に入っている)。街の中心部はなかなか決められない買い物客と何となくやって来た観光客でごった返していた。とっさに、急いでここから抜け出さなければと思った。スマートは、ロンドン・タクシーの面目をつぶすほどわずかなスペースで見事にUターンをした。そして数秒後にはもう雑踏から抜け出そうとしていた。スマートでなければ、この大渋滞から抜け出すのに20分はかかっていただろう。

 

 
今日は私にとって大切な日になった。たった今、新型マツダMX-5に試乗したばかりだ。いろいろな意味で、これは誇れることではない。編集部(英国版)は赤のMX-5(2.0ℓ、158bhp)をこの一年保有しているが、いくつかの理由から、今日までどうしてもハンドルを握ることができなかった。素晴らしい経験は先延ばしにするといっそう楽しめるという言葉があるが、今回のMX-5の場合がまさにそうであった。MX-5はコンパクトで、レスポンスも鋭い。それに特有のバランスと驚くほど快適な乗り心地(スポーツサスペンションでない場合)を持ち合わせている。こういった要素が、通勤でもサーキットに出かける時でも、いつでもMX-5に乗って行きたいと思わせる。MX-5は家族のクルマとしても、大いに楽しめると思う。

最近、きびきび走る小型のハッチバックを数多く試乗し、手頃で最高のドライバーズカーも誕生している横置きエンジンのFFは、今や極みの状態にあると私は考えていた。だが、縦置きエンジンでFRのMX-5はこの見方を否定している。

 

 
先日、ブリストルが新型車ビュレットを発表したが、このニュースからは興味深い反応が見受けられる。ブリストルのオーナーは5年前にこの会社を買ったスィディキ家であるが、このオーナーの意向を適切に理解している人は新型が気に入り、そうでない人は新型が気に入らないらしい。反応ははっきりと二分している。“ビュレット” というモデル名はブリストルで過去に二度採用されており(一度はクルマに、もう一度は飛行機に)、由緒ある名前だ。と同時にこの名前は、405や409に代表される1950年代と60年代に全盛を極めたフィルトンで製造されたモデルラインの終焉を意味している。したがって、新型ビュレットの伝統的なスタイリングは現代のメカニカル・コンポーネントの上にデザインされている。今回発表された予定台数70台の新型ビュレットはすでに一部が売約済みだが、購入したのはブリストルの熱烈な愛好家とコレクターだという。

また、スィディキ(スィディキが所有するカンコープ・グループは自動車の最先端技術のエキスパート)は、未来のすべてのブリストルをレンジエクステンダー付きEVにする見込みだと言われており、先進技術のパワートレインの開発はすでに完了している。また、未来のブリストルは、ブリストル伝統の長距離向きのラグジュアリーなGTでもあり続ける。こういった点から、私はブリストルの今後に懐疑心よりもワクワク感を大いに感じている。
 

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

 

AUTOCAR 英国版 編集長 スティーブ・クロプリー

オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。新しく独特なものなら何でも好きだが、特に最近はとてつもなくエコノミカルなクルマが好き。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
 
 
 

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