コラム&エッセイ

2016.11.30

目標はル・マン! 女子大生レーサー日記

第1話:レースが好きになったきっかけ

ある日、AUTOCAR編集部を、ひとりの女性が訪ねてきた。岩岡万梨恵さんの「わたし、女性レーサーとしてル・マン24時間レースに出るのが夢です! ちゃんと文章も書けたらもっといいですよね!」という目には曇りひとつなかった。彼女の夢が叶うかどうかは、誰ひとりとしてわからない。しかしAUTOCARはまっすぐな彼女に賭けたいと思った。このページは、コラム、あるいはエッセイの域を超えた、いわば彼女の生き方そのものである。

レースが好きになったきっかけ

はじめまして! こんにちは! 女性最速のレーサーを目指している岩岡万梨恵です!

いきなりですが、今日はわたしがなぜレースに興味を持ち、レーサーを目指しているのか書いていきたいと思います。

レースに興味を持ったきっかけ。それはわたしの父の影響でした。父はレース観戦やクルマが好きで、わたしは3歳でF1観戦デビューを果たしていました。

小さなころは「速いクルマが沢山いるなー、音がすごいなー」なんて感じるくらいでしたが、中学2年生のときに生まれて初めてインディカーを見に行った時には、別の感情が湧いてきたのです。

初めて目にするオーバル・コースは全体が見渡せてレース展開がすべて見ることができること、音の迫力、ピット作業の速さ、何分の1秒を争う世界を目の当たりにして心臓がドキドキしているのを覚えています。

 
そのとき、わたしは「レーサーになりたい」と直感的に思いました。その日の夜、夢の中のわたしはレーサーになって観客席のほうに手を大きく振りながらマシンを降りていました。

そんな夢を見つけましたが、まずレーサーになるにはどうしたらよいのか全くわかりませんでした。

レーサーってどうしたらなれるんだろう?

パソコンで調べてはみるものの、ライセンスって?

まずクルマを用意しなくちゃだし、免許だってあと7年後……先生に相談するも「なんでレーサーなの? どうしたの?」と苦笑いをされてしまったり……。

そうこう悩んでいるうちに、あっというまに高校生になり、続けていた器械体操部に入り毎日部活に打ちこんでいました。

 

 
相変わらずレースは好きで、学校でインディカーやF1の雑誌を読みながら先生と話したりはしていましたが、流れに身を任せているうちに、18歳で大学生1年生になったのです。

大学ではチアリーディング部に入り、レース活動とは無縁の生活をしていました。だけど、ある日、何年かぶりに父とインディカーを見に行くことになったのです。

久しぶりのインディカー。そして、その年が日本でインディカーを開催する最後の年でした。さみしい気持ちを感じながらサーキットへ向かいレースを目にすると、今忘れていた気持ちが爆発しました。

「わたし、やっぱり勝負の世界に生きてみたい。ありきたりの生活送るのではなくてレースに挑戦して有名なドライバーになりたい」

胸がドキドキして、感情を抑えきれなくなり、隣にいた父に「わたしやっぱりレーサーになりたい」と無意識に言葉に出していました。

そう感じてから、レーサーになるための方法を、またいちから調べなおしました。

 
ある日、F1を観戦して帰ってきた父からパンフレットを渡されました。

そこには ‘モータースポーツカレッジ’ と書かれていました。このパンフレットを見た瞬間、大学を編入することに決めました。

だけど親を説得し、入学する前に免許を取らなければなりません。ですから部活を辞め、アルバイトを始めました。

朝の5時から8時まで仕分けのバイト、9時から17時まで大学の授業、18時から23時過ぎまでケーキ屋さんのバイトをしました。

睡眠時間も少なく、めげそうになりましたが、レーサーになるために免許は必要だから! と自分を励まして、たまにもらうケーキで元気を出しながら2か月間みっちり働いてお金を貯めました。

いきなりの壁 普通免許が取れない!

やっとお金を貯めて教習所へ! 免許が取れる! クルマが運転できる! と思いながらどこの教習所へ通おうか迷っていたところ、一発試験で免許を取る方法を見つけました。

通称一発試験といわれる、みずから警察へいき、そこで試験を受け免許を交付してもらうやり方です。

格安で済む方法も!

普通に教習所に通うよりも一発試験のためのポイントを教えてもらえる教室があったのです。そこへ行った方が格安で免許が取得できると聞いて、迷わず向かいました。

その選択がどれだけいばらの道だったのか、この時は全く想像もしていませんでした。

そこは免停になったり免許取り消しになった方が再び免許を取得するところで、ある程度の運転経験がある人が受けるところだったのです。それに試験官は警察官。甘い訳がありません。

仮免からわたしは何度落ちたか……。数えることも大変なくらいです。

技術のテストの予約が取りやすいからと勧められ、埼玉の鴻巣まで1時間30分かけて通ったにもかかわらず、ある時は発進して数十メートル進んだだけで「今日はここまでだね」と中止。原因は前のクルマとの距離が近すぎるためでした。

「ぶつかってないじゃん! ふつうの道だって、みんなこのくらい近いじゃん! 」と言いたい気持ちになりましたが、グッと堪えました。

何度も何度も落とされて、やっと仮免が受かっても今度は本免試験……。

今思えば、結果的に普通の教習所に通った方が安く、すぐに免許を取ることができたかもしれません。

「わたしレーサーになりたいのに運転免許すら持てないかも。才能なんてひとかけらもないのかも」落とされるたびにうつむきながら帰りました。

「4月からは編入も許された学校が始まる。それまでになんとかしなきゃ」と、ただ焦るばかりでした。

そんな数日を過ごし、時間的にも厳しくなったので鴻巣ではなく、府中免許センターへ場所を変えました。

いざ、本免試験……。ドキドキしながらシートに座り、発進。

前のクルマとの距離をしっかりあけて安全に。制限速度標識をしっかり見て速度を守る。最後は縦列駐車。苦手科目でしたが、教官の方に何度も教えてもらった成果が出て一発で決めることができました。

結果は……

合格!

やっと念願の免許を取得することができました。一気に肩の荷が下りた気がしましたがここからが本番。学校も本格的に始まりました。

レーシングドライバー 岩岡万梨恵

1993年生まれ。父がレース好きで3歳からF1を見に行く。現在マツダ・ウィメン・イン・モータースポーツに在籍し、今年からロードスターのスプリント・レースに参戦。幼少期から器械体操を続けて得意技はバク転、Y字バランス。趣味は旧車を眺めること。将来は井原慶子さんのようなル・マン女性ドライバーを目標とし、老後はヒストリックカーのレースで楽しむことも夢。