コラム&エッセイ

2017.02.13

目標はル・マン! 女子大生レーサー日記

第10話:日本一決定戦を冷静に振り返る ― 後編

前半は、メンタル面のことを、恥を忍んで書いてみました。このページ、後半では、わたしなりに走りのことに触れてみたいと思います。

わたしはクルマを全く感じられていなかった。

思うようにタイムが出ない。新品タイヤ履いているからグリップは抜群なためタイムが上がるはずなのに。今までだったら、前日走行までタイムが出なくても予選で自己ベストが出ていた。もっとタイム上がるはず。ブレーキをいつもよりも我慢してブレーキング・ポイントを遅らせてもタイヤが滑らずグリップするはずだからもっといけるはず……。

レースが終わった直後は、レースがうまくいかなかった理由を、‘気持ちが空回りしていた’ と結論づけていましたが、今になって、落ち着きがなく、だいぶ焦っていたんだなと思いました。

「新品タイヤだからブレーキを遅らせても立ち上がれる、速く走れる」という考えが、いつもの考え方ではなかったことを反省しています。

確かに新品タイヤはグリップが高くていつもより突っ込んでも、タイヤが滑ることなく立ち上がり、タイムが出ます。

でももっと大切なこと。それは「クルマを感じる」ことでした。漠然としていてごめんなさい。これからもう少し詳しく説明しますね。

 

タイムが出ない→ブレーキング・ポイントが早い→コーナーでブレーキング・ポイントを遅らせればいいと思ってしまっていたが、これではオーバー・スピードでクルマが曲がらず、ハンドルで無理やりクルマを曲げて、タイヤの消耗も激しい走り方かつタイムも上がらない走り方になってしまいます。

タイムを上げるためには、ブレーキを踏んだあとに、コーナーに合わせたボトム・スピードまでスピードを落としてクルマに荷重をかけて曲がる。そのあとどれだけ早くアクセルを開けてスピードを乗せて立ち上がれるかがキーになります。文章だと ‘当たり前’ のように感じられるかもしれないですが、実戦だとむずかしい。

ブレーキング・ポイントの適正位置を感じ取れていないまま、ただただ突っ込んでおり、荷重も感じ取れていなかったことが原因だと感じました。

「ここでブレーキを踏めば速い、大丈夫!」という変な先入観のせいで、ブレーキを遅らせる→突っ込んだ分なかなか止まれずいつもよりブレーキを踏む→スピードが落ちる→立ち上がりでアクセルを踏むタイミングが遅れる→脱出スピードが遅くなる、というような負の連鎖になってしまいました。

この2点が今回のわたしの大きな敗因でした。

 

決勝が始まるまでに気持ちの切り替えができた! と思っていましたし、レース前半は一気に何台か抜かすこともできましたが、数台連なって走行する団子状態の中で周りにいる車両に気を配っていたものの、「もっと前にいきたい、逆転したい」という気持ちが強すぎて、次第に冷静さが欠け、周りを見ることができなくなってしまいました。

わたしはクルマに乗っても平常心で判断できるよう心がけていましたが、その日は闘争心に負けてしまった。それに井原先生が載っていた雑誌に「十分な準備はしたか。それで勝負は決まる」と書かれていましたが、わたしはまるで何もできていない。

自分で最後のチャンスを無駄にして悔しい思いをしながら年を越しました。こんなにどんよりとした気分のお正月は初めてでした。

まもなく今年のレース・シーズンも開幕しますが、2017年は笑っていたい。事前の準備と落ち着き。わたしは勝負します。

レーシングドライバー 岩岡万梨恵

1993年生まれ。父がレース好きで3歳からF1を見に行く。現在マツダ・ウィメン・イン・モータースポーツに在籍し、今年からロードスターのスプリント・レースに参戦。幼少期から器械体操を続けて得意技はバク転、Y字バランス。趣味は旧車を眺めること。将来は井原慶子さんのようなル・マン女性ドライバーを目標とし、老後はヒストリックカーのレースで楽しむことも夢。