クルマ漬けの毎日から

2017.04.16

30年ほど前。「イタルデザイン・アズテック」でトリノの街に繰り出したクロプリー編集長。ガッッコン!という衝撃とともに、目にしたものとは?

イタルデザイン 30年前と今

A trip to Italdesign in Turin brought back memories

 

 
イタリアのトリノにあるイタルデザインへ久しぶりに取材に出かけ、以前ここを訪れた時の懐かしい出来事の数々を思い出した。創業者のジョルジェット・ジウジアーロがまだ指揮をとっていた頃には、よくイタルデザインに出向いたものだった。だが、2010年にアウディの傘下に入ったことで、フォルクスワーゲン・グループの秘密のプロジェクトがここで行われるようになった。燃料タンクに砂糖が歓迎されないように、私たち取材陣はイタルデザインに歓迎されない存在になった。だが今再び、イタルデザインは外部に目を向けるビジネスを始めようとしている。

しかし、見た目にはほとんど変化がないところが面白い。たとえば会社の外の通りには、昔からなじみのある大きな穴が、道の真ん中に今も存在している。30年ほど前に私は、Aztec(アズテック)という名のコンセプトカーに試乗していて、穴の段差にクルマをぶつけたことがある。あまりにも衝撃が大きかったので、クレイでできたダッシュボードは私の膝の上にどすんと落ちてきた。

 
だが今、イタルデザインは進取の気性に富む場所であるのはまちがいない。チーフデザイナーのフィリッポ・ペリーニは、あるコンセプトカーに採用を検討している新素材の素晴らしいトリムを見せてくれた。このトリムは光ファイバーで織られており、先端を明るく照らすと全体が輝く。

この素材で造られたシートを見たら、欲しいと思う人はたくさんいるだろう。その日はまもなくやって来る。

 

 
イタリアのミラノからトリノまでの高速の旅をアウディA8の後席でゆったりと過ごした。A8のようなクルマは私たち自動車ジャーナリストと距離を置いて、どのように進化しているのかをじっくり考えた。というのも、私たちはこういうクルマをめったに試乗しないからだ。今はSUVの時代だ。販売台数の少ないラグジュアリーサルーンは、おもに社有車として使われている。

 
A8はじつに洗練されており、次の電化時代ではどのような改良が可能になるのだろうかと考えずにはいられなかった。近くを走るバイクがけたたましいエンジン音を発していたようだが、A8に乗っていた私たちにはほとんど聞こえてこなかった。

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)


 
 

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