クルマ漬けの毎日から

2025.07.04

ルノーグループは、ルカ・デメオCEOが7月15日付で辞任すると発表しました。30年以上自動車業界に貢献してきたデメオ氏がこの業界を離れることに、クロプリー編集長はショックを受けています。

偉大なリーダーの辞任、ルノーのルカ・デメオCEO【クロプリー編集長コラム】

もくじ

自動車業界を去る 残念な決断

自動車業界を去る 残念な決断

ルカ・デメオの決断に私は落胆している。ルノーグループCEOを辞任するという発表を聞いて、重要な人材を失ったと感じている。

というのも、デメオはこれまでにトヨタ、フィアット、アバルト、アルファ・ロメオ、フォルクスワーゲン、アウディ、セアト、そしてルノーとアルピーヌに在籍しており、長年の取材を通してデメオのことをよく知るようになったからだ。

また彼のことを、究極のカーガイだと見ていた。ルカ・デメオは私にとって、欧州自動車業界で最後の真に偉大なリーダーだったのだ。

ルカ・デメオの強いリーダーシップのもとで誕生した新型ルノー5。欧州カー・オブ・ザ・イヤー2025を兄弟モデルのアルピーヌA290とともに受賞。

デメオはしばしば、情熱とバランスシートへの鋭い洞察力の両方を持っていることで称賛されてきた。だが、さまざまな職務でデメオを見てきた私としては、彼の真の強みは、自信に満ちたカリスマ的リーダーシップにあると確信している。

ステランティスのカルロス・タバレス元CEO(2024年12月に辞任)が、自身の仕事が困難な状況になるまで発揮していたリーダーシップと同じタイプのものだ。

デメオはタバレスの身に起きたことを意識していたにちがいない。経営トップとしてどれほど上手くやっていても、いずれ壁にぶつかるものだ。だから、いくつかの問題は後任の人たちに残すことが、おそらく賢明なのだと。実際ルノーには、まだいくつかの課題が残っている。

一方、デメオの経歴を見てみると、これまでそれぞれの仕事を5年から7年の長さで続けてきた。ルノーの在籍期間もすでに5年を超えているので、彼としてはおそらくいまが別れのタイミングなのだろう。

だが、グッチなどの高級ブランドを救うという仕事は、彼のような人に十分に大きな仕事には思えない。ルカ・デメオが自動車業界を去ることが、非常に残念だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    小島薫

    Kaoru Kojima

    ドイツ自動車メーカーの日本法人に在籍し、オーナーズマニュアルの制作を担当。その後フリーランスで翻訳をはじめる。クルマはハッチバックを10台以上乗り継ぎ、現在はクーペを楽しんでいる。趣味はピアノ。

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