ジープ・グランド・チェロキーSRT

公開 : 2012.06.22 16:58  更新 : 2017.05.29 18:34

■どんなクルマ?

グランド・チェロキーSRTは、史上最も速くパワフルな、そして狂気に溢れたジープだ。グランド・チェロキーのトップ・パフォーマンスたる”halo”モデルで、461bhp、63.4kg-mを発揮するヘミ・エンジンが搭載される。SRTとは、クライスラー・グループのハイ・パフォーマンス・ディビジョンであるストリート・アンド・レーシング・テクノロジーの略である。

SRTのミッションは、グランド・チェロキーの4WDならではの実用性に加え、パフォーマンスと快適性を加味することである。ひとつ前のグランド・チェロキーSRTは6.1リッターのエンジンを搭載していたが、この新しいSRTは6.4リッターのヘミ・エンジンを搭載する。しかし、そのキャパシティとパフォーマンスの向上は、ヘミ・エンジンに変わったことだけでない。

エンジンは、アクティブ・インテーク・マニフォールドと、ハイリフト・カムが与えられ、驚くようなパワーを絞り出している。と同時に、フルパワーが必要とされない時には、フューエル・セーバー・システムによって8つのシリンダーのうち4つのシリンダーが動きを止める。このシステムは、ダッシュボードにある控えめな”エコ”ボタンで動作する。しかし、本当に意味でのエコではない。何故なら、その燃費は7.1lm/lという数値だからだ。

この2トン以上の4×4モデルが、スポーティな味付けを与えているのは、スタンダード・モデルよりもダイレクトなフィーリングを持つようにアレンジされたステアリングによるところが大きい。また、SRTによってチューニングが施された可変ダンピング・システムは、セレック・トラック・システムによって、トラック、スポーツ、オート、スノー、トウ(荷室を引っ張る時に使用する)5つのモードで管理される。

デザインもSRTによるもので、アグレッシブなスタイルが与えられている。車高は、ベース・モデルに対して、フロントが25mm、リアが35mm低くされている。また、リア・スポイラー、幅広くなったホイール・アーチ、ボンネットの上の黒いヒート・エクストラクター、デュアル・エグゾースト・システム、リア・ディフューザー、そして20インチの5スポーク・ホイールなどが装着されている。

インテリアはレーシング・マシンに影響を受けた装備がされている。革巻きのステアリング・ホイール、SRTのエンブレムが付いたナッパ革とスエードのシート、カーボンファイバーのアクセント・パーツと金属のペダル類などだ。

■どんな感じ?

驚きに値しないが、グランド・チェロキーSRTのパフォーマンスは、そのスタイル同様にマッスルだ。

あなたがボリショイ・バレエ団の卒業生なみの繊細なフットワークを持っていない限り、低速での走行はその強大なトルクのせいもあって微妙なスロットル・ワークを必要とするので、非常に厄介だ。しかし、一旦、田園都市の開けた道に出るとその情景は一転する。スロットルを開けるまでは、そのエンジン・サウンドは静かなものだが、ひとたびアクセルを開けると、そのエグゾースト・ノートは強大となり、激しい野獣の如きパワーを発揮する。0-100km/h5.0秒というパワーは、大きなペダルを踏み込んむことよって、遺憾なくその性能を発するのだ。

SRTは、ヘミ・エンジンのパワー・デリバリーにおいては、どんな領域からでも円滑に発揮できるようにチューンしたようだ。結果的に言うならば、制限速度を気にしないのであれば、いかなる尾行も不可能なほどのパワーが引き出せる。

5速オートマティック・トランスミッションは、一部のドイツのライバルよりは鋭くはないが、それでも十分な性能をもっている。そのシフトはパドル・シフターで操作することができる。

セレック・トラック・システムのオート・モードは、絶えずそのセットアップを路面に合わせようとしてくれるのだが、われわれのテストドライブではスポーツ・モードのほうが更に全域において良い乗り心地であったこと確認している。実際に、バンプに対する衝撃吸収力はスポーツの方が良く、ハンドリングもダイレクトであった。一方、トラック・モードは、ほとんどの道では固いと感じるものだった。

広いキャビンと、視認性に優れるダイヤルとスクリーンの大きさは快適なドライビングを約束してくれる。BMWよりはそのクオリティは良くはないが、オプションで用意される豊富なキットは魅力的だ。また、しばしば大きなAピラーが邪魔をするが、その高いドライビング・ポジションによる見通しは総じて良い。そのポジションもあって、グランド・チェロキーは重さ2360kg、長さ4846mm、そして左右のサイドミラーの幅は2m以上あるが、全体的にはドライブ中にそのサイズを意識させることはない。

■「買い」か?

ジープは、大胆にもマッスルカーらしい性能と印象的なスタイルを持ったクルマを造り上げた。しかし、その大きさゆえ、パーキングでは2台分のスペースを必要とするため、テスコの駐車場では
多くの人から睨まれることになろう。その一方、その燃費ゆえ、ガソリンスタンドの店員とは急激に仲良くなることができりょう。

しかし、このクルマを買うことを決定する場合、実用性を加味することが必要なのだろうか。とはいうものの、その価格だけを考えればなかなかお買い得なモデルでもある。サンルーフ、パワフルなハーマン・カルドンのステレオ・システム、衛星ナビ、ブルートゥース、クルーズ・コントロール、衝突警告とブラインド・スポット警告のついた安全装置などがすべて標準でつくのだ。それを考えると、ドイツのライバル達よりもリーズナブルな設定なのだ。

燃料費に関する余裕はもたなければならないが。

(マット・バート)

ジープ・グランド・チェロキーSRT

価格 58,995ポンド(740万円)
最高速度 258km/h
0-100km/h加速 5.0秒
燃費 7.1km/l
Co2排出量 328g/km
乾燥重量 2360kg
エンジン V8 6417cc
最高出力 461bhp/6250rpm
最大トルク 63.4kg-m/4100rpm
ギアボックス 5速オートマティック

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

ジープの人気画像