レクサスIS300h Fスポーツ

公開 : 2013.05.22 12:34  更新 : 2017.05.29 19:24

■どんなクルマ?

レクサスのハイブリッド・ラインナップを完成させるジグソーの最後のワンピースがこの新しいISになる。これで、少なくとも日本のラグジュアリー・ブランドであるレクサスの中で、ガソリンと電気によるハイブリッド・モデルを持たない車種はなくなったことになる。このブランドではディーゼルの展開は一切にない。また、通常のガソリン・モデルも残されてはいるが、そのボリュームは非常に少なくなっている。

このISハイブリッドの登場は、14年間、3世代にわたって手がけてきた”ハイブリッド・シナジー・ドライブ”が、ヨーロッパのプレミアム・マーケットにおいてBMW 3シリーズアウディA4、そしてメルセデス・ベンツCクラスと対抗する新たな武器として装備されたことを意味する。それは、衆目を惹く存在になるはずである。しかし、残念ながら現時点でレクサスの英国でのセールスは年間5,000台でしかない。

新しいISサルーンは、全長を75mm伸ばすだけでなく、全体が再設計されるという念の入ったアプローチが行われた。

エンジンは178bhp、22.5kg-mの2.5ℓ4気筒のアトキンソン・サイクル・ガソリン・エンジンと、141bhp、30.6kg-mを発揮する電気モーターの組み合わせで、リア・ホイールを駆動する。そのアトキンソン・サイクル・エンジンは、筒内直接噴射を高圧力化・大流量化することで混合気の均質化などを図ったD-4Sと呼ばれるもので、低摩擦ピストン・リンク、低摩擦タイミング・チェーン、低摩擦バルブギア、そしえインテリジェント・オイル・ポンプなどを持ち、13.0:1という高い圧縮比を持つ。これに192のセルを持つニッケル・メタル・バッテリー・パックによって駆動されるモーターがセットされる。

IS300hのボディ剛性については、軽量素材の導入によって、ボディウェイトを増やすことなく向上しているとトヨタは語っている。また、サスペンションについてもセットアップが見直され、アンチロール・バーは20%固められフロントのロール・レジスタンスを向上させた他、新しいマルチ・リンク・リア・サスペンションの採用によってグリップが15%向上した。また、新しいステアリングとブレーキ・システムは、よりクイックなレスポンスとスムーズなコントロール、そしてより大きなフィードバックをもたらしているという。

ちなみに、このISハイブリッドについて、トヨタの社長、豊田章男は「あなたの心を変えるクルマだ。」と語っている。

■どんな感じ?

これといったサプライズをIS300hに期待してはいけない。しかし、あなたがレクサス・サルーンに望む出来の良さが確実に表現されているクルマである。すべての面で改善が行われているのだ。

キャビンは、リア・シートは本当に大きな背の大人であればヘッドルームが不足するものの、リアのレッグルームは前モデルに対して85mmも改善された。われわれのテストしたモデルはレザー・トリムであったが、ソフトタッチなフェイシアは非常に魅力的だった。また、ドライビング・ポジションは低いが、ステアリング・ホイールの位置もジャスト・フィットだ。ドアの締りなどの音も良く、スイッチギアの配置なども、上級モデルであるLSリムジンの豪華さが、この大衆的なプライスのモデルにまで引き継がれているといった感じだ。

そして、このリムジン並のテイストは、走りだしても引き継がれることになる。内燃機関が囁くような静けさを保ったまま、低回転でクルマを走らせる。これは驚くべき静粛性だ。IS300hとくらべてしまうと、BMW 320dは騒がしいクルマでしかない。また、メルセデス・ベンツC220 CDIも静かなクルマではあるが、比較するとIS300hは潜水艦、レッド・オクトーバーのように感じるかもしれない。

オプションのAVSダンパーを快適なセッティングであるノーマルにセットする。IS300hは、タウン・スピードからハイウェイまで本当に滑らかな乗り心地を見せてくれる。それでいて、ラグジュアリーは雰囲気と、高い経済性を発揮してくれるのだ。実際、今回のテストルートでの総合燃費は17.7km/ℓであった。

それでいてダイナミクスにも優れる。コーナーではきびきびとしたフィーリングをステアリングが伝えてくれ、高いグリップとフィードバックをコーナー毎に示して食える。その方向性の確かさとバランスの良さは、アウディA4を越え、Cクラスに匹敵する。

しかし、そのハンドリングと究極ともいえるダイナミクスをもったIS300hだが、パワートレーンの力不足は感じずにはいられない。E CVTのマニュアル・モードは、何かスリップしているような感触があるのだ。しかも、そのパワーは、フルスロットルを与えたとしても本当に220bhpが出ているようには感じられなかった。

■「買い」か?

確かにスポーツ性の不足は、レクサスIS300hの鍵となる問題のままだ。それ以外の点については、綺麗なキャビン、著しいリファインメント、改善されたハンドリングなど、いままでのどのISよりも素晴らしい。

また、109g/kmというCO2排出量であるが、ライバルのディーゼル・モデルと比較すれば、更に低いエミッションが求められるかもしれない。

(マット・ソーンダース)

レクサスIS300h Fスポーツ

価格 £33,495(520万円)
最高速度 201km/h
0-100km/h加速 8.3秒
燃費 21.3km/ℓ
CO2排出量 109g/km
乾燥重量 1620kg
エンジン 直列4気筒2494cc+電気モーター
最高出力 220bhp/6000rpm
最大トルク 22.5kg-m/4200-4800rpm(エンジン)+30.6kg-m(モーター)
ギアボックス E-CVT

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

レクサスの人気画像