シトロエンC4カクタス e-HDI92 エアドリーム

■どんなクルマ?

シトロエン・カクタスは、クロス・オーバーに対するフランス人によって導かれた答えの一つである。まるでUFOのようなフロントのデザインは現行のC4ピカソを連想させ、僅かに高い車高以外は従来のCセグメント・ハッチバックさながらのプロポーションとなる。

目を引くのは、このクルマのメイン・ビジュアルでもあるエアバンプである。両サイドのドアに据えられたそれは、スーパーマーケットの駐車場でショッピング・カートがドアにぶつかったり、となりのクルマのドアが当たったりする事を避ける目的で備えられており、2枚のプラスチックのクッションの間に空気を封入する構造となる。

実際にこれを試すためにスーパーマーケットに行ったのだが、結論としてエアバンプがある箇所だけはボディを傷から守ることが出来た。いうまでもなく、エアバンプはパネル全てを覆っているわけではないので、どちらにしても両サイドに注意する必要がある。

このクルマは他のC4や、その従兄弟に当たるプジョー308が用いる新しいEMP2プラットフォームの上に構成されているわけではなく、シトロエンC3の使用するプラットフォーム1をそのベースにする。したがって、175kgの軽量化に成功し、トータルの車重はC4比-200kgとなる。全長の4157mmというサイズはC3の3941mmとC4の4329mmの間に位置する。

オプションで4WDを選択することは出来ず、前輪駆動のみの設定となり、トランスミッションはマニュアルか、セミ・オートマティックから選ぶことができる。

シトロエンは元来、自社の製品を語る上で’低価格’と言ったワードを避ける傾向にある。しかしながら詳細については後に譲るが、C4カクタスにはコストを抑えたパーツが散見される。兎にも角にも、シトロエンは ”デザイン・バリュー” あるいは、”顧客の心を掴む” という言葉を好んで使うようだ。

借り出したモデルは、左ハンドルのC4カクタスで、シャインと呼ばれるe-HDI92エアドリームなるトップ・グレードである。他にも2種類のグレードが用意され、エントリー・グレード、中間グレードはそれぞれライブとフィールと呼ばれる。

また、7穴のインジェクターを持ち、ターボ・チャージャーの構造が変更された吸入圧が1600barの既に馴染み深い1.6ℓ4気筒エンジンはETG6(エフィシエント・トロニック・ギアボックス6)と組み合わされる。

■どんな感じ?

テスト中、C4カクタスは見る者の視線を思うままに集めていたのだから、ルックスによるシトロエンの思惑は見事に成功したと言っていいだろう。

インテリアも特徴的なものとなっており、インパネの物理的なボタンは全て全て7インチのタッチ・スクリーン上に移設され、C4ピカソに見られたデザインを更にシンプルにした形となる。

パッセンジャー用のエア・バッグはルーフに移設されたため、グローブ・ボックスは上部の蓋を、上に開くスタイルになった。

クラッチ・ペダルを廃したETG6と呼ばれるセミATは、センター・コンソール下部にある大きなボタンを押すことによりドライブとリバース、ニュートラルを選択することができる。

室内環境は低予算という言葉は似つかわしくない程に特別な雰囲気を醸し出しており、フランス車らしさを誰もが感じられる素晴らしいデザインが施されている。

しかしよくよく注意して見れば、内装には硬質なプラスチックが多用されていることが分かる一方、指が触れるようなダッシュ・ボード上の小さな箇所は柔らかい素材が用いられている。

これ程までに、質感への並々ならぬ思い入れを見せつけられると、われわれだって黙ってはいられない。無意識に重箱の隅をつつくような見方をしてしまうのも無理はなかろう。フロント・ドアはレザーのストラップになっているが、リアは従来の形状と同様。また、ウインドウにも同じ事が言え、フロントは電動で操作できるがリアはポップ・アウト式となる。もちろん、こうすることにより11kgの軽量化に貢献はするのだが、後部座席に座ったパッセンジャーは二度と窓を下側にスライドできないことにもなる。

また後方の足元の余裕は、通常モデルのC4と瓜二つである一方、頭上のクリアランスは小さく感じられ、乗り降りは少しばかり難しい。ラゲッジ・ルームは358ℓとクラスの平均的な容量は確保しているが、リア・シートを折りたたむ際、6kgの軽量化に成功した反面、自由度は低く、それぞれのシートを同時に折りたたもうとしても腕の長さが妖怪並みに長く無いかぎり不可能だ。

キーを捻る(エンジン・スタート・ボタンは無い)と1.6ℓのエンジンは他のモデルに比べて大きめの音を立てる。防音機能はお高いのだから仕方がないといえば仕方がないけれど…。更に振動が容赦なく伝わり、どんな燃料がフロントで燃やされているのかは、考えるよりも先にわかるはずだ。

ドライビング・ポジションは良好ではあるが、従来のハッチ・バックと比較するとそこまで視点が高いと感じることはない。またデジタル・ディスプレイの視認性も申し分ないのだが、レヴ・カウンターは備わらない。

6速のセミATは、クリープを行うようになったし、1速と2速の変速は更に滑らかになった。確かに良い仕事をするのだけれど、DSGのシフト・スピードを期待しない方が良いだろう。ステアリング・コラムの部分にはパドルシフトも備わっており、もちろん自分の好きなタイミングで変速することもできるのだが、もう一度書くがレヴ・カウンターが無いために、注意深く耳で回転数を推し量りながら変速する以外に方法はない。

組み合わされる205/50 R17のタイヤは荒れた路面でさえも乗り心地を損なうことはないのだが、実際にとても柔らかい乗り心地に感じさせるのはソファの様なシートのおかげでもある。問題なのは、2時間もこのシートに座って運転すれば、特別快適に感じなくなる点だ。

高速道路でのテストでは新たに風切り音とタイヤ・ノイズが大きい事に気付かされる。しかしハンドリングは信頼に足る出来映えだし、高速域でも安心で落ち着いていた。コーナーの連続する路面では、言うまでもなくロールとアンダーステアを感じる事になるのだが、他のクロス・オーバーのそれに比べると控え目である。

さらにエンターテイメント性にも不満を感じることはなく、エレクトリック・ステアリング非常に良く仕立てられいるし、スタビリティ・コントロールも本当に必要なときにしか介入してくることはない。ETG6はそれなりに変速時間を要すが、低〜中回転を意識的にキープするようにすれば気分よくドライブすることができるだろう。

■「買い」か?

初試乗を終えた時、C4カクタスにたいしてポジティブな印象が色濃く残った。キャビンの空気感しかり、乗り込んでから運転に至るまでの節度感しかり、このクルマを嫌いになる余地はほとんどない。

価格的にも、そして経済的観点から見ても、このクルマはハッチ・バックの派生版としてメイン・ストリームになる可能性は充分にある。

ただしわれわれがテストした、10月に発売される予定の最も高価なモデルはというと、無条件に購入を奨めるわけにはいかない。なぜなら予想される価格は£18,000(267万円)、つまりは同メーカーのC4 HDI92と同価格、また別の言い方をすればダチア・ダスター1.5dCi 110 4×2 ローリートよりも£4,500(67万円)高価だということになるからだ。なるほど、実際の価格をみても、やはり ’低価格’ と言う言葉が似合わないのがシトロエンなのである。

(フランシスコ・モタ)

シトロエンC4カクタス e-HDI92 エアドリーム

価格 £18,000(311万円)
最高速度 184km/h
0-100km/h加速 11.4秒
燃費 27.8km/ℓ
CO2排出量 94g/km
乾燥重量 1055kg
エンジン 直列4気筒1560ccターボ・ディーゼル
最高出力 92ps/4000rpm
最大トルク 23.5kg-m/1750rpm
ギアボックス 6速ロボタイズ・マニュアル

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