フォード・エコスポーツ1.0エコブースト

公開 : 2014.07.30 23:40  更新 : 2017.05.29 18:54

■どんなクルマ?

驚いた表情をしたフグ。何かの漫画のキャラクター。空に浮かぶ風船。フォードエコスポーツがデビューして以来、たくさんのモノに喩えられてきたけれど、このクルマは他とは一味ちがうのは確かだ。

フォードの擁すSUVレンジには、既にクーガと、それより一回り大きなエッジがある。来年にこのエコスポーツが加わればSUV3兄弟の完成と言うわけだ。

フィエスタと同じBセグメント用のプラットフォームを採用し、インドのチェンナイにある工場で組み立てるところもフィエスタと同様だ。このクルマを投入するにあたり、急拡大中の小型SUV市場で一旗揚げるというのがフォードの目的で、買い手に強い印象を与えるために、価格や動力性能よりも、デザインに注力したようである。したがって、意図的に威厳あるフロント・マスクや、アグレッシブな全体像になっている。

もっとも、極度にモダンなデザインの小型SUVはこのクルマだけではない。日産ジュークルノー・キャプチャーなど、この分野のクルマは皆ファンキーなデザインを纏っている。エコスポーツがこのようなデザインになったのも、なにも偶然の経緯ではないのだ。

このクルマの武器はいたってシンプル。用意されるエンジン限定的で、ギアボックスも今のところは5速MTの1種のみだ。しかし来年の初旬には、6速パワーシフト・デュアル・クラッチATが1.5ℓのガソリン・エンジンに組み合わせられる予定だとアナウンスされている。

チタニウムというグレードが標準であるのに加えて、チタニウムXパックを£1,000(15万円)で選択することができる。こちらの場合は、レザー内装、クルーズ・コントロールが用意され、16インチのホイールは17インチに変更される。購入者のうち50%がチタニウムXパックを選ぶと予測しているそうだ。

その他にもフォード製の ’シンク’ 接続パッケージが£250(3万7千円)、メタリック塗装が£495(7万3千円)、リア・パーキング・センサーが£210(3万1千円)で選択可能となっている。

実は南米では、このクルマの先代モデルが2003年に発売されているので、事実上は2代目となるのだが、ヨーロッパに輸入されるのはこのモデルが初めてだ。いまのところイギリスではかなり珍しい存在であるし、オートカーがテストをするのも初めてだ。

■どんな感じ?

高いドライビング・ポジション、フロントの見晴らしの良さ、これら2点がインテリアにおける特徴だ。外観から期待するほど、冒険的なインテリアというわけではなく、他のモデルから流用したパーツが目立つ。すくなくともルノー・キャプチャーほどの気合いは感じられない。

しかし、頭上や足元のスペースには余裕があり、60:40に分割できるリア・シートを立てた状態で310ℓ、畳めば1238ℓものトランク・スペースが確保されているため、実用性に関してはフォードの意気込みを感じることが出来る。

スペア・タイアはトランク内ではなく、ボディ後方に据えられたため、トランクの容量は確保できているのだが、どちらかと言えばデザイン上の仕掛けに見える。横方向に開くトランクのドアは、実用性の観点から言うと重すぎる。ショッピング・バッグなどを腕から下げていれば、開閉に苦労することになるだろう。

外観をみればある程度の予想はつくかもしれないが、運動能力に関してはエコスポーツの得意分野ではない。フィエスタの場合、同エンジンにおける0-100km/h加速は9.4秒となるのだが、エコスポーツの場合は12.7秒というのがフォードの公表値だ。

しかしコーナーの続く道では、この値から想像するほど遅い印象はない。僅かなボディ・ロールとともに、正確にコーナーをすり抜けていくのだ。もう少し軽ければ、フィエスタのように俊敏であったに違いない。

大部分の道ではどっしりとした乗り心地で、ドライバーとの対話性もさほど希薄ではない。3気筒のエコ・ブースト・エンジンは、経済的には優れるが、高速道路で常用する速度域ではパンチに欠ける。ロード・ノーズや風切り音は、フィエスタ同様に耳に届いてはくるが、煩いと感じるほどではなかった。

最低地上高は180mmが確保されており、真のオフロード性能を携えているとフォードは言う。これに関しては、能力を試す機会に恵まれなかったのだが、少なくとも4WDのモデルを用意すべきではなかろうかと、われわれは考える。

短い距離ではあったが、1.0ℓエコ・ブースト・エンジンは14.2km/ℓを達成。1.5ℓのディーゼル・エンジンは同ルートにて15.9km/ℓだったのだが、こちらを買うにはあと£500(7万4千円)が必要になる。

■「買い」か?

車両価格でいうと、ダチア・ダスターと良い勝負といったところだ。ただしフォードいわく、小さなSUVを購入する層は低価格さよりも、デザインを優先させる傾向にあるらしい。

日産ジュークやヴォグゾールモッカほどのインパクトが有るかどうかは個人個人の主観にもよるとは思うが、少なくともエコスポーツは、運転した印象、市街地でのマナー、インテリアのスペースにおいて、今後このクラスで目立った存在になるに違いない。

(マット・バート)

フォード・エコスポーツ1.0エコブースト

価格 £15,995(276万円)
最高速度 180km/h
0-100km/h加速 12.7秒
燃費 18.9km/ℓ
CO2排出量 125g/km
乾燥重量 1350kg
エンジン 直列3気筒999ccターボ
最高出力 125ps/6000rpm
最大トルク 17.3kg-m/1400-4500rpm
ギアボックス 5速マニュアル

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