アウディ・プロローグ・コンセプト

公開 : 2014.11.27 23:50  更新 : 2017.05.29 18:15

現行のフォルクスワーゲンパサートやゴルフのデザインを担当したマーク・リヒト氏は、その経歴からも、クリーンで先進的なデザインにおいて彼の右に出る者はいないと言われている。

そんな彼が引き受けた次なる仕事は、VW傘下のアウディの次期モデルたちのデザイン。新たなデザイン部門のボスとなったリヒト氏は、最新のプロローグ・コンセプトカーにアウディのこれからの方向性を諷示した。

デザインが着手されたのは今年の4月。彼がアウディに移籍しれ間もない頃だ。既にある高級車レンジ用のメカニカル・レイアウトを流用するかたちで、すらりとした2ドア・クーペの構想が浮きあがったのだった。

アウディ社内では少し前から話が進められている次期A6、A7、A8に用いられるデザイン言語が、このプロローグにたっぷりと反映されている点は、ぜひとも覚えておく必要がある。

さらに大事なのは、すでに耳目を集めているアウディA9のデザインのヒントにもなるという点。ご存じない読者のために、まずはA9の説明から。

A9とは、後に発表される4代目A8と機械的パッケージを共有し、ドイツはネッカーズルム工場で組み立てられる予定の、メルセデス・ベンツSクラス・クーペに対抗するフラッグシップ・クーペのことである。巨大なアルミニウム製ボディをもつこのクルマは2017年に正式なデビューを控えている。

そしてプロローグは、つい先日、ロサンゼルス・モーターショーで華やかなデビューを飾った。われわれは、まさにそのモデルを走らせる許可を得て、ビバリー・ヒルズ・ホテルへと向かったのだ。燦々と輝く太陽のしたで待ち構えるプロローグは、こちらがたじろいてしまうほどに壮麗に見えた。

フロントにドンと腰を据えるシングル-フレーム・グリル、鋭利なエッジの立ったヘッドライトに、ピンと引き締まったサーフェス。低く、力強く隆起したショルダー・ライン、ほのかに折り目のついた脇腹のライン、伝統を感じるホイール・アーチに細かやな技巧が凝らされたテール・ランプ。目線を集めないわけがないのだ。新しい試みがたくさん盛り込まれているけれど、ひと目でアウディとわかる不思議な存在感がそこにあり、これこそが後にデビューするモデルのヒントとなっているのだ。

全長5100mm、全幅1950mm、全高1390mmのプロローグは、現行A8と全幅こそ同じものの、全長は40mm短く、全高は70mm低いという。R&D部門のボス、ウルリッヒ・ハッケンバーグ氏いわく、このディメンションはA9のプロダクションカーに受け継がれるとのことだ。

大きく繰り抜かれたホイールハウスを、わずかな隙間しか残さずに22インチのホイールが占拠する。これがまた並外れた横幅と絶妙にバランスし、おどろくほど堂々として見える。

しかし、そうであるがゆえに、つまり新しすぎ、高価すぎ、希少すぎるがゆえに、こちらが萎縮してしまったのも事実。あるいはアウディから派遣されたプロローグのボディガードが、執拗に私のブルージーンズの染料が純白なシートに色移りしないかを気にしすぎていたからなのかもしれないけれど……。

ドアの先端に手をかざせば、センサーが感知して自動的にドアが開き、運転席へ招き入れてくれる。キャビンに目をやれば、独立した4座と、もはや近未来の世界ともいえる斬新なデザインを見ることができる。広範囲にわたって、タッチ-スワイプ・ファンクションが適合され、数あるディスプレイが驚くほど整然と並べられているからだ。

キャビンの表面の大部分はレザー、研磨されたアルミニウム、ウッドで覆われている。扱い方を手短に教わり、幅広いけれどサポートが豊富なドライバーズシートに身をおさめる。シートからステアリングまで、調整はすべて電動式になっており、もちろん極めてスポーティなポジションである。

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