存在感のアピールの仕方でいうと、F-タイプRの方がニュアンスは近い。そしてAUTOCARはF-タイプの ’我の強さ’ がかなり好きだ。エンジンをオンにした瞬間からこれでもかと言わんばかりに吠えまくり、シャープで尖りまくっている。

ただしインテリアはAMG GTに及んでいない。隅々まで抜かりなくデザインされているのだが、AMG GTの仕上がりはひとクラス上のレベルにある。£85,010 (1,571万円)というプライス・タグを考えるとF-タイプにはもう少し努力してほしいところだ。

一般道を逸れてから、’たのしい’ 道に差し掛かってからは、F-タイプに対する不満はそっくりそのまま過去のものになる。ターボではなくスーパーチャージャーを、4.0ℓ V8ではなく5.0ℓ V8を組み合わせたF-タイプはグイグイと引っ張ってくれるのだ。

驚くほどの、いや、馬鹿げた速さであり、右足を動かした分だけ、忠実に加減速を行ってくれる。

AMG GTが1750rpmから66.2kg-mを引きだすのに対して、F-タイプが69.4kg-mを引きだすには3500rpmまで待たなければならないが、狂おしいほど研ぎ澄まされたレスポンスのおかげで、F-タイプの方が生命感にみなぎっているように感じる。

ZF製の8速ATによるところも大きいのだろう。加速態勢に入ってからは、継ぎ目のない変速が淡々と続き、あまりのスピード感に開いた口が塞がらないとはまさにこのことだと思った。

ジャガーの方が活き活きとしているが、ステアリングはAMG GTより重く、正確性もAMG GTには劣っていないが、いかなるシチュエーションでもF-タイプRの方が重く感じられる。

公開されている重量はAMG GTが1645kg、F-タイプRが1650kgと、たったの5kgの差しかないのに、そう感じられるのは、やはりステアリングの重みによる違いが大きいのだろう。

ただし感覚を抜きにした実際の身のこなしはAMG GTとF-タイプともに鋭く、特にコーナー脱出時には、後輪が自ら進んで車体を蹴りあげでくれる。

しかしトラクションはF-タイプの強みではない。楽しいか？と言われれば楽しい。鮮やかか？と言われれば答えに窮する、といったところだ。

ただしボディ・ムーブメントが小さいぶん一般道ではさしたる問題ではないし、ステアリングの仕立ても従順であるため、むしろその獰猛さに心を奪われてしまう。

AMG GTとF-タイプRは互いに欠けている部分をそれぞれが持ちあわせており、どちらもそれぞれ独自のキャラクターで、欠点を覆い隠し、それ以上にドライバーを楽しませてくれる。

そこで911GTS。ポルシェは1963年より一風変わった手法をもって、そのアイデンティティを確立してきた。

今回の3台のなかでは、もっとも小さいエンジンを積み、もっともパワーが控えめで、もっとも横幅が狭く、もっとも軽い。それに+2のリア・シートを有するのもこのクルマのみで、誰もがどのような結末になるのか分からない。