ホンダ・ステップワゴンG・EX

公開 : 2015.05.13 23:45  更新 : 2017.05.29 19:09

結論から先に言ってしまうと、まったくパワー不足を感じる場面はなかった。それどころか1600回転から5000回転まで最大トルクを発揮し続けるというエンジン特性のおかげで、むしろ歴代最高の走りっぷりを感じたほど。今回の試乗コースには、ミニバンとしては珍しくワインディングも設定されていたのだが、それも納得の走りっぷりだった。

ホンダの1.5ℓユニットというと、フィットやヴェゼル、グレイス、ジェイドに搭載される1.5ℓハイブリッドが思い浮かぶが、それと比べてもトルクの違いは歴然。7名ないし8名という乗車定員の違いと、G・EXでは1670kgに達する車重を動かすには、ターボとの組み合わせが適しているということだろう。とはいえエンジンのパワー&トルクと引き換えに、JC08モード燃費についてはG・EXの場合で16.2km/Lと、ハイブリッドに比べるとやや分が悪く、ユーザーとしては悩ましいところ。

スタイリングについては、フロントマスクは近年のホンダ・デザインの手法を引き継いだ “ホンダ顔” 。薄いヘッドライトの採用でシャープな印象を与えているが、これはよりスラントされたAピラーによるところも大きい。ステップワゴンには5ナンバー・ミニバンという制約があるゆえ、全幅や全長はおのずと決まってくるけれど、全高に関してはその限りではない。そこで新型ではルーフ高を上げて頭上空間を拡大するとともに、燃費スコアに繋がる空力性能を向上させるべくピラーを寝かせた。

通常であれば、ピラーを寝かせると室内空間は狭く感じるものだが、ここでもエンジンのダウンサイジング化の恩恵がある。コンパクトに設計された1.5ℓターボはエンジンルームの前後長を40mm短くすることを可能にし、新型ステップワゴンではその得られた空間すべてを室内空間の拡大に宛てた。ゆえに外観サイズはほぼそのままながら、ひとクラス上の室内空間を実現することができたのである。

運転席に座っても、その広さや開放感は抜群だ。ルーフまでの距離が広がっただけでなく、「サイドウインドウをなるべく立てました」と設計陣が語るキャビンは左右ガラスまでの距離が広くとられており、非常にゆとりが感じられる。一般のセダンなどから乗り換えると、直立というかむしろ上半身の空間は逆台形形状に広がっているのではないか?と思えるほど。

その広い印象は、後席に座っても変わらない。新型ステップワゴンでは、これまでベンチシートが標準でキャプテン・タイプがオプションだったのに対して、逆になった。つまり左右両側にアームレストを備えるキャプテン・タイプのシートが標準となり、ベンチ・シートはオプション設定となっている。これは2列目乗員の快適性を重視した結果ということだが、実際に座り心地はもっともいい。ステップワゴンで多人数乗車で長距離移動するという場面に座席を選ぶなら、間違いなく2列目が正解だ。

そして3列目シートも変更があった。床下に収納可能な点は同じだが、先代モデルでは背もたれを畳んだのちに床下へ回転収納させていたのに対し、新型では背もたれを畳んだあと、パンタグラフのように床下へ収納する。そのため座面の前後長は短く、大人が長時間乗るには少々きつい。しかし収納方法を変更したことで、左右シートを個別に格納することが可能になり、ユーティリティ性能は高まったともいえる。

この3列めシートの個別収納と組み合わせて使いたいのが、新型ステップワゴンの特徴のひとつである “わくわくゲート” だ。通常の跳ね上げ式テールゲートでは、開閉に力が必要だったり、開閉には後方スペースが必要だったりという問題があったが、それらを解決するために用意されたのがこの装備である。中央やや運転席側より開くサブ・ドアの存在は、ショッピングセンターの駐車場などで買い物をする際など重宝するだろう。

このサブ・ドアは操作感も軽く、必要に応じて3段階で開閉ができることも、女性ドライバーには便利な装備といえそうだ。もちろん荷物を出し入れするだけでなく、2列目シートがキャプテン・タイプとなったことで全席ウォークスルーを実現、後部ドアから運転席へのアクセスも可能になった点にも注目。専用のアシスト・グリップも備わるなど、実用性は高い。もちろん車内にもドア・ロックのスイッチが用意され、車内側から開けることもできる。

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

ホンダ ステップワゴンの人気画像