E63 Sは端的にいって ‘とってもばかげたクルマ’ なのだが、これは緻密な計算のうえで成り立っている。ならば、どこか嘘っぽいのか? いや、そんなことはない。だからこそ、すばらしいのである。

■どんなクルマ?

わたしは、E63 Sのことをロータス・カールトンの生まれ変わりだと思っている。まぁ当時、最高速度が300km/hに達する612psのファミリー・セダンと聞いても、ピンとこなかったはずだけど……。

とにかく、目の前にあるクルマは、最高速度が300km/hに達する612psのファミリー・セダンである。タイヤは煙をあげ、たちまちツルツルに。そういったクルマである。ホットロッドと言ってもいいだろうか。

ベースとするのは、最新のメルセデス・ベンツEクラスだ。控えめではあるがたしかにボディは膨らんでおり、前：265/35、後ろ：295/30の20インチ・タイヤを履くために、現に11mmトレッドが大きくなっている。