ルート66:忘れられたハイウェイ アキュラNSX試乗記 後編

公開 : 2018.08.05 16:10

全米のコーナーを集めたような峠

ところで、アリゾナ州にはシットグリーブス峠という道がある。ここなら束の間とはいえNSXを操る甲斐がありそうだ。雰囲気はウェールズみたいだが、もちろんこっちの方が暖かい。道もすばらしく、32km/hの速度制限なんか誰も守らない。まっすぐな道ばかり3200kmも走ってきたから、アメリカ中のコーナーをみんなここに集めたんじゃないかと思えてくる。

ステアリングは見事なまでに正確だ。1週間も乗っているのに、シフトパドルがステアリングコラムでなくステアリングホイールのほうに付いていることにはじめて気づいた。それだけでなく、シャシーがホンモノのスポーツカーにふさわしい実力を秘めていることも。そうして、われわれはこの道をたっぷり楽しんだ。

つぎにやってきたのはオートマン。130年も前には商売の天才が一瞬の輝きを見せたが、往時の有りようを残したまま廃れていった。いまでは野生のロバと、ルート66と書いてあるバッジやナンバープレート、カッコいい消防士の絵入りペンナイフといった土産物を売る店ばかりだ。

とうとう終着点が近づいてきた。オートマンからカリフォルニアに入るまでは結構すぐだったが(アメリカでは、とんでもない長距離だって一瞬だ)、これまで味わったルート66の雰囲気はいよいよ消え去りつつある。おそらく、この辺の町は全盛期でもそれほどルート66頼みではなかったからだろう。それは今もそうだ。もしくはルート66を旅してきたひとびとも、この辺まで来るともうたくさんだったのかもしれない。

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