マセラティ・グランツーリスモMC 2018 最後の試乗 ロマンスこそ存在意義

公開 : 2018.09.12 12:00  更新 : 2018.09.12 16:11

素晴らしいGTカー それでも残る不満

小さな不満を除けば、GTカーの真骨頂が長距離移動と、目的地までいかにパッセンジャーを楽しませるかにあるのだとすれば、グランツーリスモは依然としてその要求に十分応えている。どんな速度でも快適性を失わず、Bピラー周辺から聞こえてくるわずかなウインドノイズを除けば、キャビンは十分に静かだといえる。まるで教会のなかにいるかのようなメルセデスのS500クーペにいつも乗っているのでなければ、それも気にならない程度であり、両者とも数百マイルの旅など何事もなかったかのように感じさせてくれるだろう。

それでも、気筒休止やコースティング機能、その他最新の燃費向上技術など搭載されていないにもかかわらず、最高で9.9km/ℓに達する長距離燃費は注目に値する。86ℓのタンク容量があれば、805km以上の航続距離を期待することができ、今回のテストではさまざまな条件で走り回って8.1km/ℓの燃費を記録している。


滑らかなA級路はまさにこのクルマのためにあるようなものだが、路面状況が荒れてくると、1900kg近い重量と、長さのあるホイールベースをもつこのクルマは途端に対応に苦しむようになる。

ノーズからのニュートラルなバランスとともに、MCは適切なグリップとトラクションを発揮するものの、そのコントロール性は特筆するレベルにはなく、固められたダンパーセッティングにもかかわらず、ドライバーが要求水準を上げると、そのボディはフロントアクスルの動きについていくことができなくなる。

そのため、コーナーへの進入には注意が必要であり、フロントタイヤが伝えてくるフィールにもダイレクトさがまったく欠けていると言わざるを得ない。マセラティが登場間近のアルフィエーリを真のドライバーズカーにしたいのであれば、ステアリングラック(現状は油圧式だ)のレシオに手を入れるとともに、ブレーキも強化する必要があるだろう。

英国の路上にもMCは十分上手く対応してみせ、基本的な乗り心地は素晴らしかったが、ポットホールや荒れた路面ではその影響を強く受ける傾向があった。とりわけ、フロントの鋭い衝撃をそのままボディへと伝え、リアにも落ち着きが不足しているように感じられた。

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