ロールス・ロイスで「お抱え運転手」体験 VIPを送迎 注意事項は?

2018.10.13

お客様が姿をあらわす

アバスの会社の運転手は待ち合わせの時刻よりも15分早く着いてひかえるという。わたしもそれに従い、余裕をもって指定のお迎え場所の車寄せにファントムをすべり込ませ、後席ドアのそばに立って準備を整えた。ほどなくして、客人が姿を現した。

この瞬間、なんとしたことか、頭に叩き込んだはずのアバス直伝の教えはすっかりふっとんで真っ白になってしまった。

うつむいたまま口にした「どうぞお客さま」は言葉にならず、左の後ドアを「左手で」開け(後ヒンジのドアにはものすごく無理のある所作だ)、お客を後席へ押しこむように乗せるが早いかバタンとドアを閉め、おまけにスピリット・オブ・エクスタシーをかすめるかのように前をそそくさと横切って運転席に乗りこんでしまったのだ。

席についたあとも、目の前のT字路へ向かってグイと動きだしてからお客に行き先をうかがう始末。「ケンジントン・ハイ・ストリートですね? かしこまりました」よかった、これはまだ忘れていなかった。

やることをもうひとつ思いだしたわたしは、だしぬけにたずねた。「車内の温度はいかがですか? ラジオの音は大きすぎませんか?」

「すみません、いま電話中ですので」…ああ、まあそういうひともいますよね。それからは、つとめて教科書どおりの運転に励んだ。ステアリングは10時と2時の位置をにぎり、背筋を伸ばして、加減速はなめらかに…。そこへ後ろからひと言。「すみませんが、このままだと会議に遅れます」

 
最新試乗記

人気記事