ロードテスト アウディA6アバント ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2018.12.02 10:10  更新 : 2018.12.06 16:36

 

意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 走り ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★☆☆

アウディA6のモデル戦略としては、「クラスをリードするパフォーマンス」や「突出したダイナミクス性能」といった表現は、あまり重視される項目ではない。そのかわり、空気抵抗の少なさや風切り音の低減、燃費といった項目が優先順位としては高く設定されている。これは30年ほど前から変わらない、アウディのエグゼクティブ・クラスのモデルの特徴でもある。ライバルモデルと比較して、シャープなハンドリングを目指している最近のアウディの他のモデルとは、少し異なっている。

路上に出ても、A6アバント40TDIは先祖返りしたかのような雰囲気すら感じ取れる。現代の基準で見れば、アクセルを深く踏み込まない限り、2.0ℓ4気筒ディーゼルエンジンは非常に洗練された振る舞いを見せる。アイドリング時や低回転域では静かで振動も少なく、レスポンスも素早く、充分なトルクを引き出すことが可能。大きなボディを持つA6を、安々と加速させる。

デュアルクラッチ・トランスミッションの変速もスムーズで、角のないトルクコンバーター式のATと遜色のない、滑らかさを体現。加えて変速も素早い。トランスミッションでわずかに気にかかったのが、停止時から深くアクセルを踏んだ時のクルマの反応。太いトルクが一気にフロントタイヤへ伝わるためか、0-100km/h加速テスト時には乾燥した路面でも、電子制御のトラクションコントロールが機能してしまった。40.7kg-mというトルクはこのクルマにとって充分過ぎる数値とはいえないが、このA6の場合は少し持て余している様子。

48km/hから112km/hへの中間加速に必要な時間は7.5秒だが、6気筒ディーゼルエンジンを搭載したライバルのBMW 5シリーズ・ツーリングは6秒を切る。またアウディでも、今年のはじめにわれわれがテストした6気筒ディーゼルを搭載するA7 50TDIは、同じ中間加速をわずか5.3秒でこなした。一方でボクスホール(オペル)・インシグニアGSiスポーツツアラーは、アバント40 TDI Sに近い7.7秒となる。

A6のエンジンは全回転域に渡って力強いが、高回転域に向けて積極的に回りたがる正確ではない。また実用回転域も広いわけではないから、自らマニュアルモードでシフトレバーを操作し、変速した方がストレスは感じないだろう。パフォーマンスとして不足はないものの、A6のプレミアム感の演出としては、メカニカルな部分の洗煉性や先進的な技術、走行燃費などに重きが置かれているといえる。

洗煉性の部分では充分に理解できる。トランスミッションのスマートでスムーズな振る舞いや、マイルドハイブリッドシステムによってエンジンが停止した際の静寂な車内などは、充分に満足できるもの。しかもツーリング時の燃費も悪くはない。燃焼効率を最大化するには、ドライブモードでエフィシェンシーを選択する必要があるが、巨大な荷室を持つボディに搭載された203psを発生するエンジンとしては優秀な、17.7km/ℓという燃費を実現している。

もうひとつ気になったのがブレーキング。湿潤条件は共通で、アウディのテスト時の方が気温は高かったのにも関わらず、112km/hからのフルブレーキングで比較相手のボクスホール(オペル)・インシグニアより10m以上も制動に要する距離が長かった。

テストコース

いつものミルブックの丘のルートを走った印象は、「魅力的」「エキサイティング」という言葉より、「安全性」「安定性」といった言葉が適切。といっても、批判的な意味ではない。カーブの続く道でもボディコントロールは極めて安定しており、充分なフロントタイヤのグリップが、優れた安心感を与えてくれる。

ステアリングホイールへ伝わるフィードバックは不足気味ながら、クイックに仕立てられたステアリングのおかげで、5mもあるボディからは想像できない運動性能を叶えている。低回転域から充分なトルクがあるため、かなり急な上り坂でも、明確なもどかしさは感じられなかった。

T1セクションの後のヘアピンでは、ボディバランスを大きく崩してしまった。荷重移動は漸進的なものだったが、ボディロールが大きすぎたことが要因だろう。T2のセクションではフロントタイヤのグリップ力が不足気味になった。侵入速度が高すぎたためか、すぐにアンダーステアに陥ってしまった。T5セクションの後、T6の急な勾配が続くセクションでは、豊かなトルクのおかげで不満のない走りを披露した。

発進加速

アウディA6アバント40 TDI Sライン Sトロニック
テストトラック条件:湿潤/気温13℃
0-402m発進加速:16.8秒(到達速度:140.1km/h)
0-1000m発進加速:30.1秒(到達速度:180.5km/h)
48km/h-112km/h加速/4速:9.5秒

ボクスホール(オペル)・インシグニア・スポーツツアラー2.0ビターボDブルーインジェクションGSi(2018)
テストトラック条件:湿潤/気温7℃
0-402m発進加速:16.6秒(到達速度:139.5km/h)
0-1000m発進加速:30.2秒(到達速度:174.4km/h)
48km/h-112km/h加速/4速:8.2秒

制動距離


アウディA6アバント40 TDI Sライン Sトロニック
テスト条件:湿潤/気温13℃
97-0km/h制動時間:3.07秒


ボクスホール(オペル)・インシグニア・スポーツツアラー2.0ビターボDブルーインジェクションGSi(2018)
テスト条件:湿潤/気温7℃

 

意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 走り ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

関連テーマ

おすすめ記事

 
最新試乗記

アウディ A6の人気画像