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回顧録 歴代911比較試乗 最新は最良なのか

2019.02.09

タイプ930カレラ3.2クラブスポーツ(1987年型)

読者諸氏もご賛同いただけるだろうが、このカレラ3.2は、オリジナル911が改良を積み重ねてたどり着いた、究極といっていい存在である。これ以降のモデルは、基本的なアーキテクチャと空冷というエンジンの冷却方式を引き継いでいたとしても、ハードコア一辺倒だった基本哲学は確実に薄れ、よりユーザーフレンドリーなアプローチへと変わっていったからだ。

そのカレラ3.2だが、最新のタイプ991から乗り換えたわけではないにもかかわらず、その雰囲気には信じがたいほどのビンテージ感がある。本当のモデルイヤーよりはるかに古いクルマに思えてしまうほどだ。

わずか25年前のユーザーが、これほど劣悪なドライビングポジションと視認性の悪いメーター、冗談にもならないエルゴノミクス、効きすぎるかまるで効かないかのどちらかしかないヒーター、踏み応えがぎこちないペダル、操作性の悪いトランスミッションを積んだこのクルマに喜んで乗っていたとは本当に信じがたい。この劣悪さには、まったく弁解の余地はない。だが、本当にそれだけのクルマなのか?

キーをひねり、3.2ℓフラット6のエンジン音を聞いてみる。991のあとに聞くそれは、まるでレオナ・ルイスからジャニス・ジョプリンへ切り替えたくらいの激変ぶりだ。その喉から出る声は決して澄んではいないが、改めて聞き込むと決して悪くはない。それに、たった231psだったはずのパワーにしても、車重は今のルノー・ルーテシアより軽いのだ。

標準モデルでも0-97km/h加速は5.5秒にわずかに届かないくらいのタイムだから、軽量化を施してバランスを見直したこのクラブスポーツならもっと速いはずである。そうであれば、現在の水準に照らしてみても、この古参兵は十分に速い部類に入る。

また、ハンドリングはじつにスリリングだ。この時代の911はそこにほとんど矯正など与えられておらず、重量配分から予想されるそのままに、オーバーステアかアンダーステアかの二者択一である。それもかなり派手な両極端だと覚悟しておく必要がある。このクルマを速く走らせるのは難題だが、それは速く走らせた場合に無事に生きて帰るのがかなり困難だからにほかならない。

しかし、ひとたびこのクルマを制御する術を身につけてしまえば、軽い鼻先(アンダーステアとすぐロックするブレーキの原因だ)に起因する問題をうまくあしらい、重いテール(純然たるトラクションの源)の利点を生かしきれるようになる。そうなった暁にはこのステアリングだけですべてを許せるようなり、必ずや手に入れたい一台に昇格するはずだ。逆に、乗りこなす余裕がなかったなら、手をつけるべきモデルではない。

スペック

新車価格
最高速度 243km/h
0-100km/h加速 5.4秒
車両重量 1135kg
パワートレイン 水平対向6気筒3164cc
最高出力 231ps/5900rpm
最大トルク 28.9kg-m/4800rpm
ギアボックス 5速MT
 
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