[ABARTH 124 spider]なぜワクワクする?竹岡圭が検証

狙い過ぎたマツダ・ロードスターのライバル BMW Z1とロータス・エランS2

2019.04.20

BMWとロータス、それぞれの個性

郊外のうねった道でペースを高めていくと、インタラクティブ・ウイッシュボーンを搭載したフロントサスペンションの効果を体験できる。BMWのような一般的な後輪駆動のクルマと異なり、前輪駆動のエランは、グリップの限界領域になるほど、コーナーをさらに攻め込んでいくことができるのだ。

一線を越えてしまっても、アンダーステアの挙動は先が読みやすく、コーナーの途中で急にアクセルを戻さない限り、徐々にグリップは回復していく。フォルクスワーゲン・ゴルフやプジョー205などで肩を慣らしたドライバーにとっては、いつものことだろう。

恐らく、ロータスのエンジニアは予算を意識したクルマの開発に慣れていたからだと思うが、エランはZ1より遥かに手頃な価格が設定された。新車当時の英国でのプライスタグは1万9850ポンド(293万円)で、BMW Z1はといえば、BMWらしいハンドリングが楽しめるとはいえ、3万7728ポンド(558万円)と倍近い差がある。新車当時の価格差はその後徐々に大きくなり、現在のエランとZ1との差は、様々な要因があるとはいえ、目を疑うほどになってしまった。

今振り返れば、エランはホットハッチから屋根を取り払ったクルマとして、ドライバースカーとしての役目を果たしたといえる。いかにもロータスらしい、目的を明確に絞ったクルマだった。反面Z1は、目標を見出すのに悩んでいたようにすら思える。BMW Z1が生産されたのはわずか2年で、素晴らしいシャシーバランスに見合った充分なパワーを得ることは、最後までなかった。

ドライバーズカーというより、エンジニアのための実験台に近かった印象の残るZ1。しかし、よく晴れた午後にドアを下げたまま心地よい風を受けながら走っていると、その実験は成功だったといえるかもしれない。

 
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