ロードテスト マセラティ・レヴァンテ ★★★★★★★☆☆☆

公開 : 2019.05.19 11:50  更新 : 2019.06.05 19:05

走り ★★★★★★★★☆☆

マセラティ最強の6気筒を積むレヴァンテが見せるパフォーマンスの数値は、馬鹿にならないものだ。ディーゼル仕様とは異なり、運転席で感じるレヴァンテSはまさしくパフォーマンスSUVである。トラベルの長いスロットルペダルを奥まで踏み込んでみれば、それがハッキリするはずだ。スタンディングスタートに、身内のライバルであるアルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオのようなアグレッシブな野蛮さはなく、常により円熟し洗練された性格を保つ。フルスロットルでも、よりスムースで平穏だ。

それでも、十分なトルクとトラクションをもつレヴァンテSは、5.1秒で97km/hに、13秒以下で161km/hに達し、48-113km/h加速はたった4.5秒だ。どのケースでも、V8ディーゼルを積むアウディSQ7でキックダウンした際に匹敵するペースだ。もちろん、2016年にテストしたレヴァンテ・ディーゼルより速い。もっと高い金額を払えばより速いクルマは手に入るだろうが、直接的な競合車に、スピードと気迫、メカニズムの芳醇さや良好なマナーの調和ぶりが、これほどうまくしつけられ、魅力的なものを見つけるのは容易ではない。

フェラーリの手になる狭角V6ツインターボの型式はF160系で、アルファがクアドリフォリオ仕様に積むF154系とは異なるファミリーに属するユニットである。とはいえ、しなやかさやドライバーを駆り立てる感じ、ときに6000rpmまで回す価値のあるほど上限を感じさせないパワーデリバリーは変わらず、さらに中回転域ではより速く走るのも容易だ。サウンドは控えめなエキゾティックさを持つ上品な音色で、そこにスポーティな鋭さがいいスパイスを利かせている。

グランルッソ仕様のテスト車は、ステアリングコラムから生えるシフトパドルを備えていなかったが、パフォーマンスマシンというよりはグランドツアラー色が濃いので、それも大きな問題ではないだろう。8速ATは、Dレンジでは賢明なタイミングでシフトする。マニュアルモードならもう少しクイックに変速できただろうと考えるとやや残念だが、それも作動のスムースさを考えれば、十分に看過できる程度だ。

テストコース

ハードに攻めたコーナリング中、荷重がかかっている側のタイヤに大きなバンプや隆起がヒットすると、このクルマの運動性が、高級SUVカテゴリーでもっとも磨かれたものではないことが露呈する。そういう際には乗り心地がこわばって不安定になるが、それは機敏さを十分秘めているのに、ボディをまっすぐ保つ能力が欠けているからだ。

中庸な速さのステアリングは、タイトコーナーで思いのほか大きな入力を必要とする。スポーツモードでは横方向の抑えがしっかり効いて、スロットルが安定していればラインをきっちりキープできるが、リアのLSDはアペックスから出口までの挙動を落ち着かせたりアジャストしやすくしたりはしてくれない。スタビリティコントロールを切ってコーナリング中にパワーをかけると、穏やかにアンダーステアへと向かう。

T2へのターンインはほどほど鋭いが、激しく旋回することはなく、トルクベクタリングも巧みで素早い脱出を実現してはくれない。

ステアリングは、前輪の負荷の変化をみごとに伝えてくれるので、T5でのキャンバー変化も手元に感じ取れる。ただし、アペックスをタイトに捉えるシャシーバランスはない。

発進加速

テストトラック条件:乾燥路面/気温9℃
0-402m発進加速:13.8秒(到達速度:166.9km/h)
0-1000m発進加速:25.0秒(到達速度:212.4km/h)

アウディSQ7 4.0 TDIクワトロ
テストトラック条件:乾燥路面/気温16℃
0-402m発進加速:13.8秒(到達速度:167.7km/h)
0-1000m発進加速:25.0秒(到達速度:211.3km/h)

制動距離

テスト条件:乾燥路面/気温9℃
97-0km/h制動時間:2.73秒

アウディSQ7 4.0 TDIクワトロ
テスト条件:乾燥路面/気温16℃

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