ボルボS60 vs アルファ・ジュリア vs キア・スティンガー vs プジョー508 比較試乗 ドイツ御三家以外の選択肢を探る

公開 : 2019.06.15 09:50  更新 : 2021.03.05 21:36

2.0ℓのDB11 ダイナミクス性能に不満

素晴らしいインテリアによって、ボルボの動力性能を大目に見ることは出来るだろうかと考えてみた。つまり、それだけS60のダイナミクス性能は、クラストップのモデルから差を付けられていたということだが、高速道路では、S60は見事に寛いだ様子を見せ、このクルマでは長時間のドライブも苦にならないだろう。さらに、低速での乗り心地も犠牲になっていない。

コーナリングも同様で、それなりのリーンを伴いつつも、それほどドライビングが楽しめるわけではないが、同じようなSUVに比べ車高が低く、落ち着きを備えていている点こそが、特徴ともいえるモデルだ。

だが、だからと言って、明らかに活気が足りないわけでも、明らかにダイナミクス性能に優れるわけでもなく、ドライバーが右足に力を込めると、エンジンは十分にその存在を主張してくる。つまり、S60が得意とするのは、長距離をゆったとり移動するようなシーンであり、個人的には、それ以上の存在だと評価している。

ボルボに近い高速での快適性を実現しているのがスティンガーだが、このキアが備えているのは高速での安定性だけではない。今回集まった4台のなかでは、ジュリアが4.64m、他の2台が4.7m台に留まっているところ、唯一4.8m以上のボディを持つ大柄なモデルであり、リア駆動と、ドライバーを楽しませようとしたこのクルマの開発者たちの努力によって、スティンガーではまるでGTモデルのようなフィールまで感じることができる。


高速での快適性でS60に匹敵するだけでなく、低速での乗り心地にも優れ、フィールに溢れるステアリングとともに、中速コーナーでの本物の落ち着きとバランスまで備えており、2.0ℓエンジンを積んだアストンDB11と言えば、言い過ぎだろうか? 確かに言い過ぎかも知れないが、わたしの言いたいことはご理解頂けるだろう。

エンジンは力強い回転上昇を見せ、オートマティックギアボックスの変速もスムースなものの、パドルによるシフトチェンジを行っても、すぐにオートに切り替わってしまう点が残念だ。それでも、このクルマには、滑らかなステアリングと、見事なボディコントロール、さらに、今回の4台では最高の中速コーナーにおけるバランスといった、多くの魅力が備わっている。

ダイナミクス性能によって、プジョーを選ぶ理由を見つけ出すのは難しい。508はお気に入りのモデルであり、ふつうのライバルに対してであれば、十分優れた存在だと評価できるが、そのフィールはややありきたりなものだ。しなやかな乗り心地と、キアには劣るものの抑え込まれたノイズレベル、さらには素晴らしいコーナリング性能を備えてはいるが、それでも、このクルマはドライバーの努力に、何の見返りも返してはくれない。

ステアリングの重さはつねに一定で、このクルマの動きを伝えてくるのは、クイックなレシオと組み合わされた小径ステアリングホイールからの反応だけであり、レンタカー向きとは言えない508は、個人的には興味深いモデルだったが、もう少しフィールが必要だろう。

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