初試乗 ホンダEプロトタイプ 電動化の新しい波 都市部に絞ったパッケージング

公開 : 2019.07.04 10:10  更新 : 2019.07.04 12:14

航続距離200kmでも満足できるユーザーのため

われわれが入手しているホンダEのスペックは多くはない。電動モーターをリアに搭載し、後輪を駆動。最高出力は150psで最大トルクは30.5kg-m。ここまでは良いのだが、液冷式のバッテリー容量は33.3kWhで、航続距離は200kmに留まっているところがネック。

比較で見てみると、BMW i3の航続距離は310km、ルノー・ゾエの航続距離は389km、キアeニロに至っては453kmに達する。そしてこのモデルのすべてが、ホンダEよりも安価か、同程度のプライスタグを下げて販売されている。しかもライバルの場合、より大きいボディを持ち、実用的なリアシートやラゲッジスペースを備えているモデルの方が多い。

電化過渡期にある目下、EVを買おうと考える購入者層にとって、航続距離は重要視するポイントのひとつ。バッテリー容量や航続距離が多ければ多い方がいい、という現在の一般的な考え方に、明らかにホンダEは逆らっているように思う。

しかし本田技術研究所でホンダEのプロジェクトリーダーを務める人見康平は、意図的に現状の考え方とは異なるアプローチを取っていると説明する。「すべての顧客の要望をカバーするには、Eよりも長い航続距離を持たせる必要があることはわかっています。しかし、それを叶えると、クルマとしてはナンセンスなものにもなりかねません。必要以上に大きく、重く、価格も高くなってしまいます。またバッテリーが大きいほど、充電に要する時間も長くなります。わたしたちとしては、動力性能や都市部での扱い、充電時間などを鑑みると、このサイズと航続距離がベストバランスだと考えています」

「加えて、シティカーのような小さなクルマを求める層にとって、Eの持つ航続距離は充分な数字です。車重を減らし、ドライビングパフォーマンスやハンドリングを向上させつつ、都市部での移動手段としてのパッケージングも満たしています。航続距離200kmでも満足していただけるユーザーのためにデザインされたクルマなのです」 と人見は説明する。

「より長い航続距離を希望されるお客様にとっては、ホンダEが適切な選択ではない、ということも認めなければなりません。しかし、この200kmの航続距離に納得していただけるお客様にとっては、この付加価値も魅力的な存在に映るでしょう」 これが開発者による見解だ。

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