可動リアウイングだけじゃない ゼンヴォ・オートモーティブ ゼンヴォTSR−S

公開 : 2019.08.18 09:50  更新 : 2022.08.08 07:55

デンマークのゼンヴォ・オートモーティブ社が発表した、ゼンヴォTSR−Sで最も目を引くのは、リアウィングの大胆な動き。Web動画をご覧になった読者もいるでしょう。しかし、ツイン・スーパーチャージャーによるV8エンジンが生み出すハイパフォーマンスも注目の1台です。

目玉のアクティブ・リアウィング

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

世界的に見ても最も際立ったハイパーカーのひとつだといえる、ゼンヴォTSR−S。まったくのニュータイプといえる、アクティブ・リアウィングがその目玉でもある。ゼンヴォ・オートモーティブ社はデンマークを拠点とする唯一の自動車メーカーであり、ゼンヴォの生産台数は、すわなちデンマークの自動車産業のすべてでもある。

ゼンヴォ・オートモーティブ社は2009年から活動をしているが、生産台数はごくわずか。今回、スパ・フランコルシャンでわれわれがドライブしたTSR−Sは、同社が生み出した15番目のシャシーとなる。もちろんゼンヴォは生産の拡大を計画しており、創設者のトロエルズ・フォラツェンはTSR−Sの生産台数を年間5台にまで増やしたいと考えている。会社としては大きな飛躍だが、パガーニケーニグセグなどの例もあるから、夢物語ではないだろう。

ゼンヴォ・オートモーティブ ゼンヴォTSR−S
ゼンヴォ・オートモーティブ ゼンヴォTSR−S

TSR−Sは、2017年に発表したTS1−GTをベースにしている。エンジンは5.8LのV型8気筒で、ツイン・スーパーチャージャーにより最高出力は1193psを繰り出す。この途方も無いパワーは、ドグミッション・スタイルの7速シーケンシャルへと伝えられる。今回の試乗は、走行会も開かれていたサーキットに限られていたが、TSR−Sはストリートリーガル。車名の2番目のSは「Street」の頭文字だ。

ゼンヴォTSR−Sの注目ポイントが、先にも触れたアクティブ・リアウィング。ウイング中央を支点に動き、リアアクスルへかかるダウンフォースを変化させる。コーナリング中にイン側のタイヤへかかるダウンフォースを減らすことでクルマをフラットに保ち、空力的なアンチロールバーのように機能する。

加速力はマクラーレン・セナと同等

車重はライバルと目されるクルマよりも重い1475kg。カーボン製のボディの内側にある、金属製のコア・ストラクチャが影響しているのだろう。だが先述の強烈なパワーにより、0-100km/h加速は2.8秒。0-200km/hのダッシュも6.8秒という極めて短時間でこなす。マクラーレン・セナとほぼ同値だ。

今回は、1台のTSR−Sでトランスミッションの不具合が発生し、2台を試すことになった。初めに乗ったのはスパルタンなロールケージが組まれ、ベアメタル製のダッシュボードにスイッチ類が盛大に並んだ、黄色のプロトタイプ。その後に、仕上がった青いロードカーで、スパを数周ずつ走行した。走らせてみると極めて速いのだが、サスペンションの設定もミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2というタイヤも同じものながら、両者のサーキットでの振る舞いは明確に異なっていた。

ゼンヴォ・オートモーティブ ゼンヴォTSR−S
ゼンヴォ・オートモーティブ ゼンヴォTSR−S

黄色のプロトタイプは、ロールケージのおかげでレースカー然としており、換気対策も防音処理も充分ではない様子。エンジンは余りにうるさく、サーキット上にはLMP2カテゴリーのレースカーも走っていたが、コースの音量制限を超えるほど。

V8エンジンの実力を試せた時間は、極めて短時間だった。このエンジンはGM製のLSXブロックをベースにしているが、ビレット・クランクシャフトと鍛造ピストンを備えている。スペック通り、パフォーマンスは凄まじく、7700rpmのリミッター目がけて、気持ち悪くなるほどの加速力をTSR−Sに与える。

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