デューンバギーをEVで復活? フォルクスワーゲンIDバギーに試乗 量産模索中

公開 : 2019.09.07 09:50

1960年代に北米で生まれたフォルクスワーゲン・ビートルをベースにしたデューンバギーをご存知の読者もいるでしょう。自動車の電動化が進むいま、フォルクスワーゲンから、EV化された新しいIDバギーが発表され、量産化の計画もあるようです。

1960年代のデューンバギーを現代に

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

フォルクスワーゲンのEVに与えられた新しいサブブランド、IDの進展は加速している。5兆2000億円という巨額を電動化技術の普及へ投資し、未来のモータリゼーションへの準備を整えようとしている。だが、最新のIDのコンセプトモデルは、意外にもとてもシンプルだ。

このIDバギーは、1960年代にブルース・メイヤーズが生み出した、メイヤーズ・マンクス「デューンバギー」にインスピレーションを受けた、見た通りのクラシックな2シーター・オフローダー。先代に習って、新しいIDバギーにもドアや固定ルーフはなく、操作系も最低限。だがメイヤーズ・マンクスがフォルクスワーゲン・ビートルをベースにしていたのに対し、IDバギーがベースにしているのは、フォルクスワーゲンのMEBと呼ばれる、EV用のプラットフォーム。間もなく正式発表されるID 3ハッチバックと同じプラットフォームとなる。

フォルクスワーゲンIDバギー・プロトタイプ
フォルクスワーゲンIDバギー・プロトタイプ

IDバギーの目的は、IDブランド・ファミリーのイメージに楽しさを注入すること。MEBシャシーの展開の可能性を示す目的もあるが、ただのショーモデルというわけではなさそうだ。フォルクスワーゲンによれば、IDバギーを少量ながら量産することを真剣に検討しており、生産を請けてくれるパートナーを探しているという。

フォルクスワーゲンは、IDバギーの生産を通じてMEBシャシーのライセンス供与を行うことを目指している。すでにドイツのe.Goという企業が、MEBシャシーのライセンス使用に名乗りを上げている。

シンプルな樹脂製ボディをEVシャシーに

いまのところ、IDバギーは1台しか存在しないが、低速でなら実走行が可能。カリフォルニア州モントレーの街を27kmほどドライブしたが、その注目度はとても高かった。われわれが向かう先では、どこでも沢山のひとが写真を撮ろうと集まってくる。ランボルギーニアヴェンタドールのドライバーも興奮した様子で、われわれにサムズアップしてくれた。

IDバギーのデザインは、低い位置のバンパーに備え付けらた丸いヘッドライトを持ち、オリジナルのバギーを上手にアップデートしている。オリジナルと同様に、シンプルな樹脂製のボディがシャシーの上に載せられた構造だ。

フォルクスワーゲンIDバギー・プロトタイプ
フォルクスワーゲンIDバギー・プロトタイプ

ピラーのしっかりしたフロントガラスは独立構造で、キャビンの後ろの頑丈そうなロールバーとともに、横転時に乗員を保護するようになっている。またフロントタイヤとロールバーの間には、コンポジット・ファブリック製のルーフを掛けることもできる。

ポップなデザインのアルミホイールは18インチで、BFグッドリッチ製のオールテレーンタイヤを装備。サイズはフロントが255/55で、リアが285/60と、プロポーションも良い。高い扁平率のおかげで、ID 3よりも最低地上高を60mmほど高くすることができている。

リアにマウントされた電気モーターは203psと31.4kg-mを発生。後輪駆動となるが、トラクションを高めるためトルクベクタリング機能も備わる。フォルクスワーゲンによれば0-100km/h加速は7.2秒で、最高速度は159km/hだという。搭載されるバッテリー容量は62kWhとなり、航続距離は249km。100kWの充電器を用いれば、30分で80%まで充電が可能となるそうだ。またIDの他のモデルと同様に、2基目のモーターをフロントタイヤの駆動用に追加でき、4輪駆動化も可能とのこと。

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