古典的スポーツカー比較試乗 ケーターハム・セブン vs マツダMX-5 vs トヨタGT86 vs 日産370Z vs フォード・マスタング 中編

公開 : 2019.10.13 10:50  更新 : 2021.01.28 18:11

いまだ現役 実は50周年

さらに、このエンジンに対する不満はギアシフトを駆使してボクサーエンジンを使い切ろうと考えているドライバーにとっての頭痛の種ともなっている。それでも、低いグリップの低い路面であれば、このクルマの楽しめるハンドリングバランスのお陰で、物足りないエンジンパフォーマンスも大した問題とは思えないだろう。

もし、こうしたフロントエンジン・リア駆動のスポーツカーの苦境を代表するモデルがあるとすれば、それは370Zだろう。このクルマがまだ現役であることをご存知だっただろうか?

GT86(真ん中)はこのなかで最速という訳ではないが、もっともドリフトがやり易い。
GT86(真ん中)はこのなかで最速という訳ではないが、もっともドリフトがやり易い。

実はわれわれも知らなかった。やる気のないとしか思えないマーケティングや露出の少なさによって、このクルマはもうすでに販売が終了したか、もう直ぐディスコンになると見做されているのであり、マーク・トウェイン同様、日産370Zも死の誤報を流されているかのような状況となっている。

今年はZカー誕生50周年という記念すべき年であるにもかかわらず、少なくとも英国におけるZブランドはこの素晴らしいプロモーションの機会を無駄にしてしまっているようだ。

決して洗練されているとは言えないZだが、非常にキャラクターには溢れている。そのルックスに相応しい走りを備えた1台であり、英国版AUTOCAR読者が所有する非常にコンディション良好なNismoバージョンの力強いボディーラインは、ドライバーにも肉体的な強さを要求するかのようだ。

古き良きスポーツカー ドライバーを笑顔に

ズシリと重いが正確な油圧式のステアリングから、しっかりとした操作感を持つ6速マニュアルギアボックスまで、すべての操作に重みを感じさせるこのクルマは、まるで小さなマッスルカーのようであり、電動アシストとデュアルクラッチ全盛の現代では、Zはまさに古き良きスポーツカーを思い起こさせる。

344psを発揮する3.7L V6エンジンはトップエンドで息苦しい様子を見せ、低回転からの回転上昇には鈍さを感じるものの、決してトルクが不足しているわけではなく、ドライバーの右足からの入力に見事な正確さで応えるレスポンスは、Zの短いホイールベースと幅広いトレッドという特徴を十分に活かして、オーバーステアへの移行も意のままに操ることができる。

Zのキャビンは見た目もフィールもやや時代遅れだ。
Zのキャビンは見た目もフィールもやや時代遅れだ。

例え人目を引くつもりがなかったとしても、Zが素晴らしいドライバーズカーであることに変わりはなく、つねにドライバーとの繋がりを感じさせる野性味が、このクルマを効率に優れた現代的なライバルたちに替わる選択肢にしている。

それでも、もちろん完ぺきではない(重量級のクルマであり、燃費は悪くキャビンは時代の流れを感じさせる)が、ドライバーを笑顔にすることのできるモデルだ。

本物のマッスルカー ケーターハムの対極

マスタングも乗り込む前から笑顔になれるクルマであり、ブリット仕様のダークメタリックグリーンを纏ったこの光り輝くこの車両は、ルックスだけであれば間違いなく現行モデルのなかで最高にクールな1台だと言える。

エンジンサウンドも素晴らしく、アイドリングでの力強い咆哮とともに、ブリッピングのたびに盛大なサウンドを響かせる。370Zがマッスルカーの精神を受け継いだモデルだとすれば、マスタングはまさに本物のマッスルカーだ。

マスタングのキャビンではレトロと現代性が上手くミックスされている。
マスタングのキャビンではレトロと現代性が上手くミックスされている。

それでもボディの大きさは如何ともしがたく、英国の路上ではまさにこのクルマのボディサイズを実感することになる。驚くほど高いシートポジションから見下ろすマスタングのボディは、まさにギリギリで車線に納まっているような状態だ。さらに、マスタングとしてはもっともシャープなブリットでさえ、メーター類はありきたりなものに感じられる。

このクルマもケーターハムと同じメカニカルレイアウトを採用しているが、この2台はその両極に位置している。

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