試乗 メガーヌR.S.トロフィー新型(EDC) 内装/スペック/価格、筑波で評価

公開 : 2019.11.12 19:25  更新 : 2021.12.28 00:14

シャシー性能を検証

アペックスを抜けて加速に移行。こっちはもっと楽にコントロールできた。

何しろ42.8kg-mもの最大トルクを、スポーツ走行では低回転域となる3200rpmで発生するのだ。

メガーヌ・ルノー・スポール・トロフィー
メガーヌルノー・スポール・トロフィー

レブリミットから逆算して神経質にシフトしなくとも、どのコーナーでも文字通りあり余る駆動トルクが得られる。ダウンシフトは1段or2段と迷うような状況なら躊躇せず1段ダウンを選べばいい。

下のギアよりも加減速は穏やかになるが、アクセル操作への応答は的確。前輪の逃げ具合や引き戻しを加減速で応答遅れ少なくコントロールできる、トルセンLSDを活かした微妙なラインコントロールも難しくはない。

この下支えをするのがシャシー性能。前後左右に大きく荷重変化する状況でも揺れ返しや接地の不安定さは一切ない。操作と挙動の因果が極めて安定している。

基本操縦特性はお手本の様な弱アンダーステア。前輪の逃げ具合は如何様にでも、というのは前述のとおり。

興味深いのは4コントロールである。

筑波で試す、4コントロール

走行モードは、ノーマル(ニュートラル)/スポーツ/レースの3モードの選択が可能。4コントロールの後輪の逆位相操舵制御は、ノーマルとスポーツは60km/h以下、レースは100km/hまでとなっている。

ふつうに考えるとノーマルから順に切れ味鋭くなりそうだが、試乗するとノーマルとレースが似た特性で、スポーツが演出志向という印象だった。

メガーヌ・ルノー・スポール・トロフィー
メガーヌ・ルノー・スポール・トロフィー

後輪操舵と言ってもステア操舵角に定量的に制御されるわけでなく、ステア操舵の舵角や操舵角速度、車速等の走行状況に応じて後輪操舵の同逆位相と操舵量が制御される。

ノーマルとレースモードの制御の基本はスタビリティ。最大負荷走行でのコントロール性を重視するレースモードでは操舵に対して素早い回頭反応を示すが、初期反応だけである。

後輪舵角は転舵(舵角増)初期に一瞬逆位相となり、すぐに同位相に移行しているようで、コーナリング中全般で前後輪のCF(旋回力)は良好なバランスを維持する。4コントロールの介在を意識しない自然な操縦感覚を生み出している。

スポーツモードが楽しい

ノーマルモードは挙動が穏やかになるものの最大負荷走行でのハンドリングの印象はレースモードと大きく違わなかった。

筑波サーキットでの限界走行では後輪逆位相制御制限の60km/h以下となる状況がほとんどないこともあるが、スタビリティ優先のノーマルモードでも限界域で優れたコントロール性を発揮するのは基本シャシー性能の優秀性と当(とう)を得た制御の4コントロールの賜である。

専用装備のスポーツエグゾースト(アクティブバルブ付き)。
専用装備のスポーツエグゾースト(アクティブバルブ付き)。

で、スポーツモードだ。これも限界まで追い込めばスタビリティ重視あるいは効率的な制御となる。だが、限界の8割方くらいの領域では切れ味や軽快感が誇張された操縦感覚。

限界までのゆとりを使ってオーバーアクション気味の挙動を楽しむ感じである。例えば、アクセルオフと素早い操舵で一気に姿勢を変えたり、コーナーの立ち上がりでアクセルを開けながら舵角を深くしたりすると、オーバーステア気味の挙動を示す。

後輪逆位相でCFを落とした結果と思われるが、危なげなく振り回すようなドライビングが可能なお楽しみモードと言える。

限界を極めるも無邪気に高揚感を味わうもよしの4コントロールなのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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