911の姿をしたモンスター ルーフSCRとCTR アナログ・スーパーカーの挑戦 前編

公開 : 2019.11.30 07:50

3.6LターボのCTRと、4.0L自然吸気のSCR

80周年を迎えるルーフは、この地にいながら新境地を目指そうとしている。「ルーフが本当はどんなことをしているのか、知らない人が多いのです」 サスペンションとタイヤの専門家である、リースミュラーが話す。彼は自動車雑誌のロードテスター以上の頭脳を持っている。

「クルマに興味を持っている人でさえ、われわれの工学的知見の深さを理解していません」 550のような狂ったおもちゃから、まったく新しい、シリアスな性能を持つSCRとCTRまで、ルーフの展開は幅広い。

ルーフ社のワークショップの様子
ルーフ社のワークショップの様子

読者の中には、ルーフのクルマをいくつか知っている人もいるだろう。1970年代のポルシェ911のルックスに、最新技術を投入した独創的なモデルが登場したのだ。1台はルーフCTRで、3.6Lエンジンにはターボが搭載されているが、もう1台のSCRは4.0Lの自然吸気となっている。

964型911のイメージそのままに、直立したヘッドライトと幅の狭いボディ、なだらかに垂れ下がったテールを持っている。だが実態は、ルーフ自らがゼロから設計し、製造する初めてのクルマとなる。

964世代の大人の心を刺激し、SNSを通じて、かつてのスーパーカーの魅力を改めて強く拡散させる2台。極めて現代的な性能を備えているから、価格は安くない。ずばり、約70万ユーロ(8400万円)となっている。実際に設計や組み立てを行っているワークショップに来るまでは、とんでもない金額に思えるだろう。

964型ポルシェ911の姿をしたモンスター

「(SCRとCTRの)プロジェクトは2012年に始まりました。当時、ジュネーブ・モーターショーでわたしたちはRCTエボを展示していました」 と振り返るリースミュラー。

320km/hの最高速度までチューニングされた964ベースのRCTエボに、大きな反響を期待していなかったルーフ。話題になっただけでなく、その場で数台が売れ、アロイス・ジュニアは現代版964について真剣に考えるようになったという。

ルーフ社のワークショップの様子
ルーフ社のワークショップの様子

そんなSCRとCTRだが、見た目は古い911に似ていても、ほぼすべてが別物。構造的にはポルシェよりもランボルギーニアヴェンタドールとの共通点の方が多い。

サスペンションは4輪ともにプッシュロッドによるダブルウイッシュボーン式。シャシーはDTMマシンを製造するファクトリーで製造された、カーボンファイバー製のモノコック。そこにスチール製のサブフレームが組まれている。

モノコック・タブの重量は筆者の体重以下。すべてのボディパネルもカーボンファイバー製で、車重は1200kgに収まる。993型911 GT2とほぼ同じ重量だ。ポルシェ製パーツは964型と993型からの流用となる、窓ガラスとワイパーのみだという。

6速マニュアル・トランスミッションも、大手ZF製の専用品。特注のMTとなると、通常なら信じられないほど高額な代物なはずだが、アロイス・ジュニアの個人的な人脈によって実現できたという。トランスミッションのケースには、「RUF」とエンボス加工されている。

パワーステアリングは油圧アシスト。10年前にポルシェは別れを告げたコンベンショナルなシステムだ。

続きは後編にて。

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