Aクラス・セダン試乗 M・ベンツA250 4マティック、サイズ/内装/セダンのメリットを評価

公開 : 2019.12.04 06:10  更新 : 2021.12.28 00:13

リアはマルチリンク

それらは4WD用と上級モデル向けとなるリア・マルチリンクサスの効果も少なくないと思われる。

ちなみにAクラス・セダンはA250 4マティック以外はFFのA180/A180スタイルとなり、これらは5ドアHBと同じくリアサスがトーションビーム。

メルセデス・ベンツA250 4マティック・セダンのトランク
メルセデス・ベンツA250 4マティック・セダンのトランク

A180スタイルとの価格差は100万円近いが、パワースペックと4WDの全天候性能だけの価格差ではなく、脚まわりも別仕立て。FRベンツ車を彷彿させる身のこなしも投資価値である。

静粛性もHB車に対するアドバンテージ。ロードノイズの音量だけでなく、音質も耳当たりがよくなっている。

密閉感というと悪く捉えられそうだが、外界との断絶した穏やかな車内とでもいうか、そんな空間感覚はリアサスまわりに隔壁を持ち、トランクスペースを独立させたセダンボディの欠かせないメリットの1つである。

操るのが心地いいクルマ

A180に対して1ランクアップはフットワークだけではない。動力性能も上位設定仕様らしい。

大まかな変速制御は巡航で1500rpm前後、緩加速で1500〜2000rpmを用いる。現代のパワートレインでは標準範疇ながら巡航ギア維持能力は高めであり、ダウンシフトなしでの加速範囲も広い。35.7kg-mもの最大トルクを1800〜4000rpmで発生するのであれば、そのくらいは何でもないだろう。

メルセデス・ベンツA250 4マティック・セダン
メルセデス・ベンツA250 4マティック・セダン

スペックを見ればもっとダウンシフトを堪えることも可能だろうが、そうしないのは加速の繋がりを重視した結果だろう。余力をたっぷり残した状態で1速ダウンシフトし、回転上昇と連動した加速で伸びやかさを演出。「ゆったり」と「スポーティ」の按配の付け方が巧みであり、操り心地のいいドライブフィールに仕上がっている。

ミッションは7速DCT。速度低下のダウンシフトと再加速が重なると、時としてガチャつくような部分もありトルコン型ATには及ばないにしても、DCTとしてはクラッチ制御も滑らか。

DCTならではの歯切れいい変速感と滑らかさの両立は同車のキャラには似合い。パワートレインも上品なスポーティカジュアルといった感じでまとまっていた。

「買い」か?

「ベンツ車に掘り出し物なし」とは自説の類だが、投資に見合った価値や差額相応の違いがあるのもベンツ車の特徴。

Cクラスの実質エントリーとなるC180アバンギャルドは504万円。A250 4マティック・セダンの19万円高。車格にこだわればCクラスのほうが買い得のように思えるが、走行性能のゆとりや全天候性能と操る心地よさはA250が上回る。居住性などの使い勝手にも多少ながら優れている。

メルセデス・ベンツA250 4マティック・セダンの前席
メルセデス・ベンツA250 4マティック・セダンの前席

同予算でどちらを選ぶかは悩ましい問題だ。なお、A250相応の性能面の余裕やドライビングの付加価値をCクラスに求めるなら、車両価格で600万円前後の予算建てが必要。車格設定より付加価値を優先すればかなり「お得」である。

ベンツのセダンらしいモデルであり、Cクラスともラップする魅力を備えている。操縦性も乗り味も、快適や安心感のセオリーを抑えながらの高性能。スポーティなどの殊更の演出がない正統の走りも好感。Aクラスならではの若々しさもある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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