【3列7人乗りSUV】新型M・ベンツGLEクラス試乗 300 dの価格/内装/走りを評価

公開 : 2020.01.05 20:50  更新 : 2021.12.28 00:10

コーナリング/乗り心地

フットワークの基本はワインディング路や高速走行での安定性。高重心のSUVで車重2トン超級とすれば当然である。

神経質な挙動を徹底的に排除している。だからといって決してルーズな操縦性ではない。

新しいリア・コンビランプは、リフレクターを下部に移動。スリムなデザインで、ワイド感を引き立てる。
新しいリア・コンビランプは、リフレクターを下部に移動。スリムなデザインで、ワイド感を引き立てる。

動き出しも収束も滑らかであり、前後の接地バランスが安定しているので細かな補正操舵もなしでコーナリングラインを維持しやすい。

コーナリング中の制動も躊躇なくできる。車体サイズや車重をあまり感じさせないハンドリングである。

乗り心地では沈み込みを抑えた硬さを意識させられる。車軸まわりの揺動感も強め。S字コーナーでの切り返しなどの挙動収束や悪路での路面当たりを配慮したサス設計が乗り心地に現れている。

高速走行での安定性、悪路での踏破性と乗り心地をうまく両立させたフットワークだが、エアサス仕様の“低速域ではしなやか” “高速域ではしっかり”という快適域の広さあるいは走りの質感を比べると見劣りする。

300 dで十分ではあるが、快適性と走行性能の両立を考えた費用対効果では悩ましい問題である。

3列目シートは?

3列シートで乗車定員は7名。サードシートに大人が座るにはセカンドシートを前方にセットする必要がある。

それでも着座姿勢は膝を抱える、いわゆる体育座りに近く、サードシートの実用性は短時間の緊急用でしかない。

標準装備される3列目シートは可倒式。フレキシブルなシートアレンジが可能。
標準装備される3列目シートは可倒式。フレキシブルなシートアレンジが可能。

もっとも、SUVの3列シート車で実用的なサードシートを備えるモデルはなく、GLEクラスはまだ使えるほうだ。ただ、セカンドシートのスライド機構は客室/荷室のバランスを積載量に応じて加減できるので、アウトドアレジャー趣味に使うには有り難い機能である。

GLE 300 dの走行性能やキャビン機能を総合的に判断するなら、アウトドア趣味に適した上級SUVとなる。

WLTC総合モード燃費は12.5km/L、同じく高速道路モードでは14.2km/Lであり、同クラスでは燃料コストも良好。SUVの雰囲気を楽しむにもいいが、SUVらしく使うためのバランスのよさが見所である。

ベンツらしさが魅力

ただし、アウトドア趣味のRVとして適した性能や使い勝手を求めるなら、1000万円近い予算建ては不要。

GLEクラスは適応用途としてレジャー向けの正統派SUVだが、それだけで選ぶには費用対効果は低い。

3列目シートは格納可能。2列目のバックレストも倒すことができる。荷室は最大1928L。
3列目シートは格納可能。2列目のバックレストも倒すことができる。荷室は最大1928L。

走りの信頼、安全&運転支援機能やインフォテインメントの先進性などのベンツ車に共通した価値へ意義を見出してこその投資効果である。

外しがないから「先ずメルセデスありき」であり、価格に見合った価値を提供するから「メルセデスに掘り出し物なし」。

結局、至極真っ当な商売をしているのだが、それも含めて信頼と良識。それをアウトドア趣味で充実したプライベートライフに展開したのがGLE 300 d。

「今流行りの……」という視点ではなく、ベンツ車らしく真面目にSUVを楽しむユーザーに向けた真面目なSUVなのである。

メルセデス・ベンツGLE 300 d 4マティック スペック

価格:940万円
全長:4940mm
全幅:2020mm
全高:1795mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:12.5km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-
車両重量:2350kg
パワートレイン:1949cc直4ディーゼル・ターボ
使用燃料:軽油
最高出力:245ps/4200rpm
最大トルク:51.0kg-m/1600-2400rpm
ギアボックス:9速オートマティック

4世代目となる新型。最新技術と装備を搭載するプレミアムSUVとなった。
4世代目となる新型。最新技術と装備を搭載するプレミアムSUVとなった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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