【伝説のミウラがアルプスへ】ランボルギーニ・ミウラP400 ミニミニ大作戦 前編

公開 : 2020.02.16 07:20  更新 : 2020.12.08 10:55

イタリアの生んだ最高傑作のひとつ、ランボルギーニ・ミウラ。映画「ミニミニ大作戦」のオープニングへ出演したオレンジ色のミウラは、長年所在不明でした。今回レストアを終え、名シーンと同じアルプスの道に咆哮を響かせました。

谷底へ落とされたランボルギーニ・ミウラ

text:Alastair Clements(アラステア・クレメンツ)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)/Paramount Pictures(パラマウント・ピクチャーズ)/David Wynn-Jones(デビッド・ウィン・ジョーンズ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
イタリアのアルプス山中に伸びるグラン・サン・ベルナール峠。オレンジ色のランボルギーニ・ミウラで最初のヘアピンを攻略しようとしている。信じられないような体験だ。

映画の中では、最終的にキャタピラー社の大きなブルドーザーによって谷底へ落とされる。そんなエンディングは、今回は迎えたくない。絶対に。

ランボルギーニ・ミウラP400
ランボルギーニ・ミウラP400

1969年の映画「ミニミニ大作戦(The Italian Job)」の冒頭では、わずか数分で不運にも大破してしまうランボルギーニ。落とされたのは、エンジンのない、ボディシェルだけではあったのだが。

2019年初めまで、イタリアの俳優、ロッサノ・ブラッツィが演じる強盗、ロジャー・ベッカーマンがドライブした本物のミウラがどうなったのか、謎に包まれたままだった。

今回のミウラP400は、ランボルギーニのヒストリックモデルの維持を担当する部門、ランボルギーニ・ポロストリコでレストアを受け、映画のスターカーとして認定された。映画の撮影以来、グラン・サン・ベルナール峠を走ったのは、今回が初めてとなるようだ。

運転をするのはエンツォ・モルッツィ。彼は映画の中で、ブラッツィがサングラスをかけて顔が映るシーン以外の、スタントドライブを担当した人物。この地に戻ってくるのは、彼も映画以来だという。

「最後にこのミウラを運転したのは、1968年の6月29日でした。当時自分は26才。木曜日にロケを始め、金曜日にはカメラを取り付けたクルマを準備しました。土曜日に撮影を済ませ、日曜日にはサンタアガータに戻りました」 と笑顔を交えて話すモルッツィは、70才だ。

スタントドライブを担当したモルッツィ

黒いロング・レザーコートの下には、ランボルギーニ・ブランドのVネックセーターを着こなす。モルッツィは今もオシャレ。きらめく目はエネルギッシュだが、どこか神経質。イタリア人らしく手振りが多い。

その手で、ミウラのステアリングホイールを操る。敬意を払い、計画的にレザー巻きのリムを撫でるように握る。タイトなコーナーが続くにも関わらず、両腕がクロスすることはない。

ランボルギーニ・ミウラP400
ランボルギーニ・ミウラP400

この手は、劇中でドライバーにクローズアップした時に映る手でもある。どこかで見覚えがあると思った。「カメラマンは助手席に座っていました。できるだけ後ろに座るようにお願いされました」 と振り返るモルッツィ。

「映画が公開された1969年に、ちょうどわたしが結婚し、婚約者と映画を見に行きました。彼女はわたしが出演していることは知らなかったのですが、オープニングシーンを見て、アタナの手ね、とこちらを向いて声を上げたのが忘れられません」

タイトルが覆いかぶさるように表示されているが、ミウラの走行シーンは4分ほど続く。渓谷で終りを迎える前、マフィア役を演じた俳優のラフ・ヴァローネからリースをたむけられる。

映画の山場の1つだった。クインシー・ジョーンズが作曲したサウンドトラックと、白日夢のような映像。突然迎える結末が、強い衝撃を与える。映画監督のピーター・コリンソンが考えた、印象的なシーンだ。

映画のエンディングも、ミウラの終わり方と近いものがあった。だが、ミウラP400の素晴らしさを再確認するために、もう一度グラン・サン・ベルナール峠を走る価値はあるだろう。

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