【ザガートのボデイにクライスラーのV8】ブリストル412コンバーチブル 後編

公開 : 2020.03.07 16:50  更新 : 2022.08.08 07:50

イタリアのスタイルにアメリカのパワー、そして英国の魂。そんな魅力満載のザガートボディのブリストルが、過小評価されていることに疑問を感じる筆者。59台しか作られなかったブリストル412コンバーチブルを振り返ります。

丁寧な開発が施された412

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ブリストル仲間の間では「冷蔵庫」という嬉しくないあだ名を付けられている、白の412コンバーチブルS2だが、オーナーズクラブのコンクールでは4度も優勝している。これまで8万ポンド(1144万円)もの費用をかけてレストアを受けており、状態は最高だ。

ブリストル412へ、そこまでの費用をかけているオーナーは数少ない。ボディーカラーは家電のようだが、600ポンド(8万円)のオプションだった純正エアコンが付いている。

ブリストル412コンバーチブル
ブリストル412コンバーチブル

新車当時、クルックはエアコンを積極的には勧めなかったようだ。コンコルドを設計したエンジニアが担当したボディは、標準のままでも通気性が良かったことが理由だった。

シートベルトの位置を調整するために、フロアにはレールが敷かれるなど、丁寧な開発が行われていたことを示している。単なるエキゾチック・カーではなく、しっかり使えるクルマを狙っていたのだろう。

白のブリストル412には、ブリストル603に用いられていた、サポート性の良いシートが取り付けられている。これも当時のオプション。フロントシートには、身重の高いドライバーでも充分快適に座れるだけでなく、リアシートにも大人が問題なく2人乗れる。

車内は261枚に別れたコノリー・レザーで覆われ、412は大人4人での快適な旅を威風堂々と楽しませてくれる。もちろん荷物も一緒に運べる。フル・タルガモードを選べば気流に揉まれることもなく、ビリヤード台程はある大きなボンネット越しに、外を眺めながら先を急げる。

英国車初の量産ターボモデル

一方の深みのあるブルーに塗られた魅力的な412ボーフォート。360度、遮るもののない視界が楽しめるが、ボンネットには有無をいわさぬ筋力が隠れている。8気筒らしいハミングとは異なる、エグゾーストノートからもそれが伺える。

滑らかなATと、感触の良いしっかりとしたパワーステアリングのフィーリング。バランスが良く、強い制動力を生むブレーキ。大きな距離もリラックスして走破できそうだ。

ブリストル412 ボーフォート・コンバーチブル
ブリストル412 ボーフォート・コンバーチブル

直線は安定しているが、コーナーでのボディロールは大きめ。着座位置が高いから、傾きも強く感じられるのかもしれない。とにかくカーブを抜けていくのが楽しい。

シャシーバランスに優れ、スピードを上げてもニュートラルさが失われない。車重が軽くなり、安定性も増しているようだ。

1980年に発売が始まった、4灯のヘッドライトを持つ412ボーファイター。クリーム色の1981年製の412ボーファイターは、活発な走り以外は基本的に他の412と変わらない。英国の量産モデルとしては初めてターボチャージャーを積んだクルマでもある。

ロードマスター社製のターボを納めるため、ボンネットにはバルジが付いている。エグゾースト・マニフォールドの右側にターボが搭載され、ウェストゲートはクロスオーバー・パイプに付いている。

低速度域でのボーファイターは、自然吸気の412と同じ穏やかなマナーを披露する。アクセルペダルの踏み込み量が少ないときは、ターボをバイパスするように吸気設計されているためだ。

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