【みんなのスポーツカー】ホンダS800 フィアット・スポーツ MGミジェット 後編

公開 : 2020.04.19 16:50  更新 : 2020.12.08 11:05

小さなスポーツカーのホンダS800とフィアット850スポーツ・スパイダー、MGミジェット。質素でも機敏で、オープンの楽しさを多くの人へ教えてくれたモデルです。メーカーの個性が色濃い3台を、比較試乗しました。

基本設計の最も古いミジェット

text:Simon Charlesworth(サイモン・チャールズワース)
photo:Will Williams(ウィル・ウイリアムズ)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
今回のトリオの中では、フィアット850スポーツがボディは最も大きく、洗練度も高い。甘美に回るエンジンが放つサウンドは控えめ。心地よく回転し、遅い速いに関わらず、走らせる喜びを実感する。病みつきになってしまう。

扱いやすい903ccの4気筒エンジンは、ホンダS800よりも漸進的なマナーで速度を高めていく。乗り心地は良く、リアエンジンらしい不意をつく振る舞いもない。

MGミジェットMkIII(1966年−1969年)
MGミジェットMkIII(1966年−1969年)

スポーツ・スパイダーのスロットルは少し渋いが、4速MTはストロークが長くゲートも広いから、変速は難しくない。良いフィーリングで滑らかに扱える。

ブレーキは、今回の3台の中で感触も効きもベスト。イタリア生まれらしく、常にドライバーの闘争心をくすぐってくる。

2つ目のチョークは3000rpmから効き始める。4000rpmから5000rpmが最もたくましい。エグゾーストノートも最高潮に達する。

日本とイタリアのコンパクトに対して、英国のMGミジェットは最も設計が古い。初代の誕生は3台で一番早く、製造期間は最も長かった。多くの自動車愛好家たちが、手頃な価格のコンパクトなスポーツカーとして、大切にしてきた。

オリジナルは、46psを発生させた948ccのMkIIオースチン・ヒーレー・スプライトがベース。高級志向のクルマとし、エンブレムを張り替えたものだった。その起源は1958年にまでさかのぼる。

アルバート・シドニー・エネバーとジェフリー・ヒーレーがデザインした1961年のミジェットは、明らかにホンダS800へ影響を与えている。1962年に改良を受け、1098ccのエンジンから56psを獲得。1964年にはMkIIが登場し、59psになった。

余計なものが一切ないボディとシャシー

最大の進化を遂げるのが、1966年に登場したMkIII。1275ccのAのシリーズエンジンは、当時のミニ・クーパーSのデチューン版。66psを獲得している。

1974年には、北米市場の安全基準を満たすためボディデザインに変更を受け、ハンドリングも悪化している。さらにトライアンフ・スピットファイアの登場で、売れ行きは伸び悩んだ。1979年、後継モデルの登場がないまま、ミジェットは終りを迎える。

MGミジェットMkIII(1966年−1969年)
MGミジェットMkIII(1966年−1969年)

今回登場してもらったMGミジェットMkIIIは、マイク・ゲストが所有する1969年式。新車当時のオーナーによって、少なくないモディファイを受けている。

マイクも、現代的な部品と当時のBMCスペシャル・チューニングやダウントン、スピードウェルなどの部品をバランスよく追加し、よりスポーティに仕立てている。基本的には、1293ccのダウントン仕様といえるだろう。

ミジェットの中にも外にも、余計なものは一切ない。3台の中で最も全幅が狭いが、ペダル周りには1番余裕がある。ロービームとハイビームを切り替える足踏みスイッチも付いていて、左足のフットレストにもなる。

ショルダーラインは高く、フィアットやホンダのように、クルマの上に座っているような感覚は薄い。キーを捻り燃料ポンプが動き始めると、ミジェットは聞き慣れないサウンドで目を覚ました。

機械ノイズを打ち消すように、ツインチョーク・キャブレターからの吸気音が響く。このトリオの中では1番荒々しい。乗り心地は一番硬く、ブレーキは一番効かない。だが唸り声は充分だ。

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