【GTらしさが向上】ベントレー・コンチネンタルGTC V8に大谷達也が試乗 W12よりシャープ

公開 : 2020.04.28 19:35  更新 : 2021.10.13 15:26

新型ベントレー・コンチネンタルGT V8コンバーチブルに大谷達也が試乗しました。湧き上がる圧倒的なトルクが特徴のW12に対し、V8はよりシャープなレスポンスでバランスの取れたクルマになっています。

刷新されたプラットフォーム

text:Tatsuya Otani(大谷達也)

いまから3年前にデビューした3代目コンチネンタルGTには、それまでの2世代とは決定的に異なる点がある。クルマの骨格を形作るプラットフォームがまったくの別物なのだ。

初代と2代目コンチネンタルGTに用いられたプラットフォームはグループ企業のアウディが中心になって開発したMLB。これはアウディA8やQ7にも採用されたエンジン縦置き用のプラットフォームで、当然のことながらフルタイム4WDにも対応する。

ベントレー・コンチネンタルGTC V8
ベントレー・コンチネンタルGTC V8

従来のコンチネンタルGTはこれを生かし、ラグジュアリーカーながらフルタイム4WD専用モデルとして誕生。そして、フォルクスワーゲン・グループが誇る軽量コンパクトなW12エンジンはフロントアクスルにまたがるように搭載された。

前輪駆動で長い経験を有するアウディらしいレイアウトだ。ギアボックスはトルコン式ATを搭載する。

これに対して3代目はポルシェを中心に開発されたMSBを用いる。パナメーラにも採用されたこのプラットフォーム、スポーツ性を重視してエンジンのほとんどがフロントアクスルの後方に位置するフロント・ミドシップ的なレイアウトを用いるのがMLBとの最大の違い。

さらにギアボックスはDCTに置き換えられ、4WDのトルク配分機構はそれまでのトルセンから電子制御式に置き換えられ、トルクの前後配分を能動的に可変できるようになった。

これにあわせてエクステリア・デザインもよりシャープでスポーティなものに改められ、インテリアは上質さを増した。つまり、グランドツアラーとしての資質を全方位的にさらに高めたのが3代目コンチネンタルGTなのである。

レスポンスに優れるV8エンジン

そんな新型コンチネンタルGTにV8モデルが加わった。エンジンのパフォーマンスはW12 6.0Lの最高出力:635ps/6000rpm、最大トルク:91.8kg-m/1350-4500rpmに対して、V8はそれぞれ550ps/6000rpm、78.5kg-m/2000-4000rpmと一歩引けを取る。

ただし、もとはといえばW12エンジンのパフォーマンスが過剰なだけで、公道でその性能をフルに発揮する機会はなかなかなかったのも事実。とはいえ、「だからW12は必要なかった」と結論づけるつもりは毛頭なく、その過剰さこそがベントレーというラグジュアリーカーの根源的価値の一部であったといっても過言ではない。

ベントレー・コンチネンタルGTC V8
ベントレー・コンチネンタルGTC V8

では、V8の運動性能はどうかといえば、これが必要にして十分以上。とりわけ、こちらもポルシェが中心になって開発されたとされる最新のV8はスロットル・レスポンスやドライバビリティがずば抜けて優れていることもあり、スペック以上のパフォーマンスを体感できる。つまり、V8エンジンの動力性能でもすでに過剰に思えるのだ。

ただし、パワーのわき出し方はW12とV8でいくぶん異なる。W12が遠くから押し寄せる大波のように、ある種の威厳を備えた回り方をするのに対して、V8はもっと弾けるようにシャープな反応を示す。

したがって、W12にするかV8にするかは、絶対的なパワーの大小で選ぶよりもエンジン・レスポンスのキャラクターでチョイスするのも1つの考え方だろう。

記事に関わった人々

  • 大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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