【攻め込んでこそ光る素質】フォード・フィエスタST マウンチューンM235へ試乗

公開 : 2020.06.05 10:20

実際の道路環境で最も扱いやすいモデル

街なかでの乗り心地も、通常のフィエスタSTと変わらない部分。常に落ち着かず、臨戦態勢にあるようだ。マウンチューンの設定で悪化したとは思わなかったが、改善しているわけでもない。

恐らくマウンチューンM235を選ぶ人は、フィエスタSTのドライバーの中でも、かなり極端な走りを好む側に属するはず。乗り心地には、あまりうるさくないかもしれない。何より、M235を選んだのなら、街を出るのが一番。

フォード・フィエスタST マウンチューンM235(英国仕様)
フォード・フィエスタST マウンチューンM235(英国仕様)

通常のフィエスタは、実際の道路環境で最も扱いやすいドライバーズカーの1台。アルピーヌA110などと並ぶ、ロードーカーだといって良い。

走り出してわかるのが、変速するまでのパフォーマンスの伸び。レブリミットへ迫るほどエンジンは熱狂的になっていくが、マウンチューンが手を施したことで、そこへトルクが追加されている。

3速を選んだまま、直線では不足なく加速でき、タイトコーナーでは滑らかに素早く抜けていける。シャシーの能力をより引き出し、味わえる。

クイックシフト・キットが組まれていても、変速フィーリングは依然として少しあいまい。でも、シフトノブの操作が少なくても、走りの喜びが減じることはない。

マウンチューンM235が発揮するスピードは、これ以上必要ないと感じるほど。充分に速いが、リミテッド・スリップデフがなく、荒れた路面では特にパワーアップしたエンジンが空回りしてしまうようだった。

郊外の一般道を楽しみ尽くせる

少しヒステリックなフロントタイヤの挙動は刺激的にも感じるが、ほとんどの場面では一連の満足感を損なうだけ。35.6kg-mものトルクを活かすのなら、クワイフ社製のLSDとの組み合わせが理想的に思える。

タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4S。とてもソフトで、安定しているゴムだ。

フォード・フィエスタST マウンチューンM235(英国仕様)
フォード・フィエスタST マウンチューンM235(英国仕様)

エンジンのパワーアップだけでも充分な費用対効果といえるが、デモ車両のもう1つの特徴は、コーナリングのレスポンス。車高が低くなり、進路変更時の動きが適度に引き締められている。

鼻先も軽く、しっかり路面を掴むから、一般道ではアンダーステアになりにくい。しなやかな足でフロントが沈み込み、リアタイヤは外へスライドしやすい性格を得ており、テールの挙動もタイトだ。

攻め込んでいくとワイルドな身のこなしに感じられるが、実際には懐が深く、寛大さも残っている。この味わい深さは、クラスでもトップレベルといえるだろう。

きちんとした操作には、きちんとした走りで応えてくれる。遊びたがりだが、しっぺ返しはない。郊外の一般道を、思う存分楽しみ尽くせる。

M235のデモ車両で筆者好みではなかったのが、スポーツ・モードとトラック・モードが用意されたエグゾーストシステム。アクセルペダルを戻した時のドラマを求めるドライバーへ応えるべく、高回転域で右足を緩めると、雷鳴のような響きが聞こえてくる。

これはあえて加味されたサウンドで、アプリでオフにすることも可能。同時に、標準のフライホイールの慣性が減っているわけでもない。標準のフィエスタSTが持つ不満も、そのまま。

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