【現行BMW製モデルのベスト】BMW M2 CSへ試乗 F87型のグランドフィナーレ 後編

公開 : 2020.06.29 10:20

モデル末期のM2へ、CSが登場。価格は上乗せされていますが、走る楽しみもしっかり上乗せできているようです。秀逸なM2コンペティションを超えることは可能だったのか、英国編集部がドイツのサーキットで評価しました。

アダプティブダンパーの装備は正解

F87型のBMW M2は、モデルライフ末期にある。それでも、シャシーの完成度は鮮烈なまま。前後の重量配分は50:50と理想的。各所に追加された補強ブレースの助けもあり、魅力的で味わい深いハンドリングを実現している。

サスペンションは大幅に改良を受け、M2としては初めて、アダプティブダンパーが標準装備された。ダイレクトで粘り強い走りを支えている。バランスも秀逸だ。

BMW M2 CS(欧州仕様)
BMW M2 CS(欧州仕様)

卓越したニュートラルさを獲得している、ミドシップのケイマンGT4ほどではない。しかしFRモデルで見れば、M2 CSに並ぶ究極ともいえる操縦性の精度を備えるモデルは、極めて少ない。

周回を重ねていくと、特に高速コーナーで、わずかにアンダーステアが残っている。アクセルペダルの力を緩めるか、ブレーキペダルを踏み込むことで、ラインを戻せる。

BMW M部門の開発を率いるディルク・ヘッカーの話では、これは意図的なもの。ドライバーへ危険性を知らせるためだという。

試乗したザクセンリンク・サーキットを走り込むほどに、M2 CSへアダプティブダンパーを装備させたのは正解だったと理解できる。M2コンペティションよりボディの動きはシャープで、ロールも制御できている。フラットな姿勢を保ち、コーナリング特性は引き上げられている。

コーナーで有効さがわかるのが、軽量なカーボンファイバー製ルーフ。単なるファッションアイテムではない。

M2コンペより明確なアドバンテージ

「軽量なルーフは重心高を下げることに貢献しています。新しいサンドイッチ構造を採用し、従来のカーボン製ルーフより軽量なだけでなく、剛性も高めています」 とディルクは説明する。

ステアリングの操舵感も鋭さを増したようだ。電動パワーステアリング・ラック自体はM2コンペティションと同じものだが、キャンバー角はわずかに寝かされた。アダプティブダンパーの助けで感度も上がり、精度も増している。

BMW M2 CS(欧州仕様)
BMW M2 CS(欧州仕様)

重み付けも適正で、反応や感触もリニア。コンパクトなMモデルに期待通りの、ステアリング・フィールを得ている。

フィードバックが向上しているかどうかは、一般道を走り込んでみないとわからない。少なくとも、自然に直進状態に戻ろうとするセルフセンタリングは強く、ドライビング体験を一層高めた性格であることは間違いないだろう。

控えめな走行を数周終えた頃には、路面はすっかり乾いていた。M2 CSを本気で攻め立てる環境が整った。滑らかな路面に、ソフトコンパウンドのミシュラン・パイロット・スポーツカップが良く食いつきそうだ。

半径が一定のコーナーへ侵入する。タイヤのグリップを頼りにラインを保ち、頂点を過ぎたところで不安感なくアクセルオン。グリップ力が増えたことで、コーナリングスピードも高まっている。M2コンペティションより、明確なアドバンテージがある。

「細かなシャシーセッティングの積み重ねによるものです。ニュルブルクリンクでは、M2コンペティションより8秒速く周回できます」 ディルクがM2 CSの仕上がりに自信を見せる。

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