【フィオラノでラ・フェラーリに匹敵】フェラーリSF90 ストラダーレへ伊試乗 前編

公開 : 2020.06.30 10:20  更新 : 2021.08.05 08:09

F8トリブート譲りのV8にトリプルモーター

エンジンはF8トリブート譲りの、F154と呼ばれるユニット。しかし、シリンダーヘッドは再設計を受け、インジェクターの圧力を増加。排気量は若干増やされ、新しいターボと超小型のインテークマニホールドが採用されている。

その結果、F8トリブートのエンジン比で25kg軽量になり、60psを上乗せしている。フェラーリにすれば、さほど難しい仕事ではないだろう。複雑なハイブリッド・システムの開発に比べれば。

フェラーリSF90 ストラダーレ(欧州仕様)
フェラーリSF90 ストラダーレ(欧州仕様)

SF90には、3基の電気モーターが搭載されている。RAC-eと呼ばれるドライブシステムとして、フロントタイヤ左右に1基づつ、2基をマウント。3基目はV8エンジンと新しい8速デュアルクラッチATとの間に挟まれる、最先端のアキシャルフラックス・モーターだ。

電気の力だけで走行する場合は、前輪だけを駆動する。最大で135km/hまで出せる。ハイブリッド・モードでも、フロントモーターは209km/hを超えるとタイヤと切り離されるが、システム総合での出力が下がることはない。

8kWhのリチウムイオン・バッテリーから、最大で162kWの電流量がアキシャルフラックス・モーターへ送られる。モーターはエンジンの低回転域でのパフォーマンスを向上させ、そもそも最小限のターボラグを、効果的に打ち消してくれる。

前輪のモーターはトルクベクタリング機能も果たし、強力な回生ブレーキとしても働く。リアのモーターはパワーを上乗せするだけでなく、エネルギー量を調整しホイールスピンも管理。エンジンの出力を絞るのではなく、余分なエネルギーを回収するのだという。

ちなみに、SF90の8速ATにはリバースギアがない。電気モーターで後退する。

0-200km/h加速は6.7秒

通常のフェラーリと同様、ステアリングホイールにはドライブモードを選択するマネッティーノ・ダイヤルがあり、ウェット、スポーツ、レース、ダイナミック・モードが選べる。さらに反対側には、ハイブリッド用のタッチセンサーが付いている。

e-マネッティーノと呼ばれるもので、e-ドライブ、ハイブリッド、パフォーマンス、クオリファイ・モードを選択できる。クオリファイは、バッテリー充電は後回しにされ、パフォーマンスが最優先されるモードだ。

フェラーリSF90 ストラダーレ(欧州仕様)
フェラーリSF90 ストラダーレ(欧州仕様)

なんと複雑で、深く感心するシステムなのだろう。でも、心配はいらない。

マラネロ周辺の、タイトなコーナーが続くチャレンジングな道でSF90を走らせたが、フェラーリらしく熱い運転をすれば、賢く複雑なシステムは見事に包み隠される。電気モーターのサポートは、まるで魔法の手のようでもあった。

効果的なことは間違いない。しかし、ドライバーに気づかせることはない。フェラーリによれば、0-200km/h加速は6.7秒。0-100km/hではない。パフォーマンスはそびえるように高い。

8速ATはギア比が煮詰められ、V8エンジンの高回転域での熱狂的なエネルギーもサウンドも、より引き出しやすくなっている。公道では、アクセルペダルを踏み切れる場面はまずない。仮にあっても、ほんの一瞬。

それでも、優れた四輪駆動システムが、フルパワーを瞬間的に解き放つ。たとえハーフスロットルで、8000rpmのレッドゾーンよりかなり下の回転域でシフトアップをしても、SF90はライバルのスーパーカーより速く感じられるほど。

この続きは後編にてご紹介したい。

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