【ファリーナ・ボディのクーペ】1台限りのロールス・ロイス・シルバー・ドーン 後編

公開 : 2020.07.12 16:50  更新 : 2020.12.08 11:04

70年の時間を感じさせない佇まい

スポーツカーのように、ボディを振り回す設計ではない。漸進的に効くブレーキも力強い。シルバー・ドーンは威厳を漂わせるかのように、落ち着いて走る。

ロータリー交差点でも、トップギアのまま通過できる。吸気音はほぼなく、排気音は穏やかにさえずる程度。大きなステアリングホイールが、手のひらの下を滑らかに回る。

ロールス・ロイス・シルバー・ドーン・ピニンファリーナ(1951年)
ロールス・ロイス・シルバー・ドーン・ピニンファリーナ(1951年)

ドライブトレインはスムーズで、トランスミッションは静か。エンジンは、控えめな回転数を保つ。

現在の走行距離も、まだ7000km。現存するシルバー・ドーンの中で、最も距離の浅い1台だろう。誕生から70年近い時間が経ったことを感じさせない佇まいがある。

このシルバー・ドーンは、ファリーナが手掛けた最初のロールス・ロイスではない。1935年と1937年に、特別なオーナーのためにボディをデザインしている。ロールス・ロイスのボディを手掛けることは、英国以外のコーチビルダーにとって、名誉でありながらも難しい仕事だったはず。

ルイージ・ブレッサニがオーダーしたシルバー・ドーンは、1975年にカマルグが登場するまで、ファリーナが手掛けた最後のロールス・ロイスだった。個性的なスタイリングだけでなく、新しいスタイルのきっかけとして、重要なモデルに位置づけられるだろう。

2014年のレストア後、270 YUWのナンバーを得たシルバー・ドーンは、ウォーレン・コンクールでファースト・イン・クラス賞を獲得。その後、シルバーストーン・オークションで、42万5000ポンド(5610万円)で売却された。

安住できるオーナーと出会えるのか

さらに3年後、グッドウッド・リバイバルでのボナムズ・セールに再び姿を見せたシルバー・ドーン。風変わりなワンオフ・モデルは、安住できるオーナーを見つけるのに苦労することも多いのだ。

希少性や歴史的な意味を高く評価する人は、大概買えるほどの資金力がない。買う余裕を持つ人は、ベントレーS1コンチネンタルなど、もっと艶っぽいデザインのクルマを好む。それが人間の心というものなのだろう。

ロールス・ロイス・シルバー・ドーン・ピニンファリーナ(1951年)
ロールス・ロイス・シルバー・ドーン・ピニンファリーナ(1951年)

自動車を長く取引する人は、どんなクルマでも必ずピッタリの買い手が見つかる、と話していた。このロールス・ロイス・シルバー・ドーンも、本当に愛してくれるオーナーに出会えると信じたい。

クルマの価値を、しっかり認めてくれるオーナー。この記事が読まれる頃には、すでに巡り合っていると良いのだが。

ロールス・ロイス・シルバー・ドーン・ピニンファリーナ(1951年)のスペック

価格:新車時 1万ポンド/現在 52万5000ポンド(6930万円)
生産台数:1台
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:140km/h
0-96km/h加速:16.2秒(標準モデル)
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:−
パワートレイン:直列6気筒4257cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:123ps/3750rpm(標準モデル)
最大トルク:−
ギアボックス:4速マニュアル

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