【サイズ/パッケージ分析】ヤリス・クロス・プロトタイプ試乗 新型SUVの内装/荷室/走りを評価 いくらなら買い得?

公開 : 2020.07.30 07:20  更新 : 2021.10.09 23:22

ハイブリッドを候補に考えるなら

例えば、今回の試乗ではハイブリッドの4WD車の後輪駆動系はほとんど休止状態。エネルギーモニターを見ても活躍しているのは前輪駆動系だけ。

コーナリング等々で無理矢理に全開を与えても後輪は駆動されず、S-VSCが介入して無謀なドライビングをたしなめるだけである。雪の市街地や登坂でもなければ、4WDの有り難みはほとんどない。

ヤリス・クロス・ハイブリッドZ(プロトタイプ)のエネルギーモニター。
ヤリス・クロス・ハイブリッドZ(プロトタイプ)のエネルギーモニター。    池之平昌信

ただ、FF車に対して約90kgも重い車重をそれほど意識しないで済むのが妙味。

エンジン駆動力に全依存しないハイブリッド車の利点でもあるが、重量増が気になったのは高負荷加速時での加速性能とエンジンの稼働頻度くらい。郊外路や高速道を模した運転で走らせていると、FF車もEフォー車もヤリスよりエンジンを回し気味かな、程度に収まっている。

増し踏み時は応答遅れ少なく穏やかなトルク立ち上げ、急加速ではエンジン回転数と車速の変化の一致感が少々希薄等々の基本的な特性は他のTHS-II系と共通するが、ヤリスと比較するとさすがに小気味よさは削がれている。

ヤリス/ヤリス・クロスのハイブリッド車をパワーフィールのスポーティ度で比例すれば、ヤリスのFF車が小気味よく、ヤリス・クロスのEフォー車が最もマイルド。スポーティ&カジュアルとファミリー&レジャーの両車のキャラの違いに応じたパワーフィールと言ってもいいだろう。

車格に対する余力もあり、上級クラスからヤリス・クロスへの移行を考えているユーザーには、同車のハイブリッド車は最有力候補と言える。

ガソリン車 前輪駆動を試す

ガソリンの試乗車は、FFのみが用意されていた。ヤリス・クロスでは最軽量仕様なのだが、生のエンジン出力で賄うせいか、試乗した3仕様の中で最もヤリスから増えた重量を意識する。

全開加速が落ちるのは当然だが、巡航ギア維持能力も低下。1500〜2000rpmを基準にした巡航回転数やダウンシフト制御は共通。タコメーターに現れるエンジン回転数の変化はヤリスとよく似ている。

ヤリス・クロス・ハイブリッドZ(プロトタイプ:Eフォー/18インチ)
ヤリス・クロス・ハイブリッドZ(プロトタイプ:Eフォー/18インチ)    池之平昌信

しかし、ダウンシフトに入るタイミングやアクセルの踏み込み量が違っている。ごく感覚的な評価になるが、速度で言えばヤリスに比べると20km/hくらい高い速度域、つまり走行負担増や高変速比で走らせている感じ。それだけ余力が減少している訳だ。

もっとも、アクセルを深踏みさせないのがダイナミックフォースエンジンとダイレクトシフトCVTの長所。アクセル開度の浅い領域の加速反応に優れ、常用回転域が低いので1.5L車としては余力感がある。

実用走行での扱いやすさと燃費に優しい走りの勘所を上手く押さえている。また、エコモード選択でダウンシフトする直前まで踏み込むと排気音の3気筒的パルス感が強いのが少し気になったが、エコモード以外は早めのダウンシフトにより体感排気音質の滑らかさは失われない。

動力性能全般を一言で纏めるなら、親しみやすい実践力。これはフットワークも同様だ。

高くなった最低地上高と全高分だけ重心も高くなるが、バネやダンパーなどで無理に押さえ込まずに滑らかに重心の動きをコントロールしていた。ロールの入りなど、中立点からの初期の挙動に抵抗感がない。ゆらりと入る感じだ。

だからといって堪え性のないサス・ストローク制御ではない。ストローク量もストローク速度も抑制が利いていて揺れ返しも少ない。ヤリス以上にゆったりとした乗り味である。

記事に関わった人々

  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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