【2台の独コンパクト】BMW 1シリーズ、アウディA1 370万円の新型ハッチバック、走りの違いは?

公開 : 2020.08.13 16:20  更新 : 2021.10.11 13:50

A1 直4/FFの良いところ

1シリーズも同志向のターボであり、絶対評価では巡航ギア維持性に優れているが、A1よりもダウンシフトのタイミングが早め。加速ギアも引っ張り気味である。

巡航ギア維持性に勝るといっても、A1もトルク任せでダウンシフトを堪えるような変速制御ではなく、スポーティコンパクトらしい軽快さと伸びやかさを意識させる変速制御。

アウディA1 35 TFSIアドバンスト(365万円)
アウディA1 35 TFSIアドバンスト(365万円)    前田恵介

A1視点なら1シリーズは非力に感じられ、1シリーズ視点ならA1は軽快感が薄い。なのだが、どちらにしても「多少」の範疇である。

4気筒vs3気筒については、やはり回り方の気持ちよさでA1。

だからといって、3気筒だから1シリーズはダメと言う気はさらさらない。3気筒といっても高回転まで軽く回るし、低回転域での脈動感もあまりない。

3気筒ではかなり優等生である。「4気筒に迫る」くらいは言えるが、やはり精度感あるいは質感では最新の4気筒に及ばない。

アウディBMWの走りの志向の違いを意識するのはフットワークだ。A1は量産FFの元祖たるアウディ(アウトウニオン)車らしくFFのセオリーに則した特性。

対して1シリーズはFR的な脚捌きである。

“リア荷重”を意識 1シリーズ

1シリーズがFR的と言っても、パワードリフトが云々という類の話ではない。

限界付近での特性はFF車のもの。

BMW 118iプレイ(378万円)
BMW 118iプレイ(378万円)    前田恵介

FR的なのは車体挙動。うねりの通過や定常円旋回でリアサスの沈み込みを強く意識する。

後輪に荷重が乗るような挙動を示すことが多く、ピッチ変化を体感しやすい。操舵初期応答に優れた操縦特性と相まって操る手応えがある。

攻め込むでもなく、快走させている時にはFRか? と思ってしまうほどだ。

前荷重でフラットに A1

FFで後輪を沈み込ませるような挙動は、操安性からすれば好ましくない。

理屈では前輪で駆動する以上、前のめり気味に前輪荷重を高めるべきである。

アウディA1 35 TFSIアドバンスト(365万円)の前席内装。
アウディA1 35 TFSIアドバンスト(365万円)の前席内装。    前田恵介

そのとおりA1は、コーナリングでは前輪を押さえ込むような姿勢を維持。サスストローク制御そのものはしなやかだが、車体軸線をフラットに保つ能力が高い。

機敏あるいは軽快な印象は少ないが、神経質な反応を廃したハンドリングは車体サイズから想像する以上の信頼感を生み出している。

要するにA1は最新のアウディ車らしく、1シリーズはFFになってもBMWらしいわけだ。

アウディ派とビーエム派

試乗車同士で比較すると、A1スポーツバック35 TFSIアドバンストとBMW 118iプレイの価格差は13万円でしかない。

プレミアム系の輸入車では手頃な370万円前後の価格設定だ。

BMW 118iプレイ(378万円)の前席内装。
BMW 118iプレイ(378万円)の前席内装。    前田恵介

ただし、両車ともにACCはOP設定である。なお、ACCはともに渋滞追従機能付きの全車速型を採用する。

車線維持支援は、A1がACCとセットで走行ライン維持型LKA(レーンキーピングアシスト)を設定しているが、1シリーズは車線逸脱警報を標準装着するのみとなっている。

無価値感というか公平無私に機能性能で優劣を付けるなら動力性能、走行感覚と運転支援がもたらす安心感の2点からA1に軍配を挙げたくなるが、それはそれで「物言い」が付きそうだ。

そんな選び方が出来るなら輸入車を選ばないだろう。

記事に関わった人々

  • 前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)
  • 川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。

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